透析療法の基礎知識

シャントの種類 〜人工血管

西田 隼人 先生

2016.08.19

西田 隼人 先生(山形大学 講師)

人工血管内シャントとはどんなもの?

血液透析をおこなうためには、1分間に約200mLもの大量の血液を体から透析器にとりだし、老廃物や余分な水分、ミネラルなどを取り除いて体に返さなければならず、血液のとりだし口が必要になります。
点滴や採血をおこなう際によく針を刺す静脈からは、これだけの大量の血液を持続的にとりだし続けることは難しいため、血液透析をおこなうためには専用の血管をつくる必要があります。これをバスキュラーアクセスと呼び、中でも動脈と静脈を直接つなぎ大量の血液が通るようにした血管のことを内シャントと呼びます。
内シャントには、自己の血管のみを用いてつくる自己血管内シャントと、人工の血管を自己の動脈と静脈との間につなげることで内シャントをつくる人工血管内シャントがあります。

人工血管内シャントの特徴と対象となる患者像

日本の血液透析を受けている方の約90%は、バスキュラーアクセスとして自己血管内シャントを使用しています。これは、バスキュラーアクセスの中でも自己血管内シャントが最も長持ちしやすく、合併症を起こしにくいからです。
ただし、充分な太さがある、細くなったり途中でつまっていたりしない、といった、内シャントをつくるのに適した動脈と静脈を持っていない方では、自己血管内シャントを作製することはできません。

その点、人工血管は人工の材質でつくられた一定の太さの血管で内シャントを作製することができるので、さきほど述べたような、良好な血管がない方でも、人工血管内シャントを作製することができます。
人工血管内シャントのほうが血管の太さも十分にあり、自己血管より使いやすいように思われるかもしれませんが、人工血管では自己血管よりも感染症がおきやすく、また、つないだ先の自己血管が細くなりやすく閉塞も起こりやすいため自己血管ほど長持ちしない、自己血管より多くの血液が流れてしまうため心臓に負担がかかりやすい、といった欠点があり、使用している方は日本で血液透析を受けている方の約7%にとどまります。

人工血管内シャントの材質と作製方法

人工血管内シャントは、人工血管を動脈と静脈の間につなぎ、皮膚の下に埋め込むようにして作製します(図)。

図:前腕に作製された人工血管内シャント

使用される材質としては、わが国にはexpanded-polytetrafluethylene (ePTFE)、polyurethane (PU)、polyolefin-elastomer-poluester (PEP)の3種類があり、それぞれに皮膚の下での折れ曲がりやすさ、作製直後から穿刺が可能となるまでの期間、手術後の腫れやすさといった点で違いがあります(図)。

図:人工血管内シャントに使用される人工血管

人工血管内シャントを作製する部位としては、上肢の前腕部分が第一選択となりますが、血管の状態などに応じて、上腕、大腿、前胸部などに作成することも可能です。皮膚への埋め込み方としては、皮膚の状態やつなぐ自己血管の状態に応じて、ループ状、ストレート状など、様々な方法があります(図)。

図:人工血管内シャントの設置方法

人工血管内シャントを作製する手術は局所麻酔で行うのが一般的ですが、作製する部位や施設の違いにより、神経ブロック、腰椎麻酔、全身麻酔で行うこともあります。手術時間は1時間半から2時間ほどかかります。人工血管内シャントは作製して2週間ほど経過してから穿刺を開始するのが一般的ですが、PUやPEPでは早期からの穿刺も可能とされています。日帰り手術でおこなう施設もありますが、穿刺を開始することができるようになるまではカテーテルの留置が必要となることもしばしばであり、そのような際には入院が必要になります。

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