予防接種のすすめ

透析ライフ便利帳

予防接種のすすめ

土谷 健 先生

2016.05.20

土谷 健 先生(東京女子医科大学 教授)

透析患者さんの免疫機能は不十分な状態

日本透析医学会の報告によると、2014年の透析患者さんの主な死亡原因は、男性では心不全、感染症、悪性腫瘍、女性では心不全、感染症、脳血管障害で、全体では心不全、感染症、悪性腫瘍、脳血管障害の順でした(図)。

図:透析患者さんの死亡原因

新規に透析導入となった患者さんでは、2012年以降、感染症が一位を占めており、透析患者さんにおいて感染症が重要な意味をもつことを示しています。
透析患者さんの免疫能については、保存期腎不全の段階から低下が指摘されており、現在の透析治療ではその回復は不十分であると考えられています。抗体として知られる免疫グロブリンは正常域にありますが、特異な外来細菌、ウィルスに対する抗体産生は低下しています。
また、血液透析の場合、血液と接触する透析膜が、補体という免疫反応をつかさどる蛋白質を活性化して白血球を刺激し、活性酸素やサイトカインを放出させます。その影響により、免疫担当のリンパ球は減少し、バランスが悪くなって、免疫機能が不十分になると推定されています。

血液透析の患者さんの感染を防ぐために

血液透析の患者さんは、腎不全状態にある、体の外に血液を引き出す治療(体外循環)を継続しているなど、特異な状況にあります。そのため、肝炎やHIVなどの、血液を媒介とする感染症が身近になるほか、カテーテルやシャントへの穿刺(アクセス)が行われる、薬剤の回路注入が何回も繰り返される、頻繁に来院する、多人数が集まる透析室に長時間滞在する、ベッドや更衣室、送迎車でほかの患者さんと空間や時間を共有する、といった特徴もあり、感染しやすい環境といえます。
このため、透析施設に対しては「透析施設における標準的な透析操作と感染予防に関するガイドライン」という、診療上、遵守する案内が定められており、感染予防のために最善の対策をとるようになっているのです。

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