ドクターインタビュー

水口 潤 先生

社会医療法人 川島会 川島病院 院長

目次

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透析治療を変えた歴史的出来事

ある程度は完成された現代の透析医療も、まだまだ進化の余地がある

課題の克服という透析の歴史の中で、特に印象に残っているトピックは何でしょうか。

水口 まず、1980年ごろに透析液が酢酸から重炭酸に変わったことです。それにより、透析困難症が劇的に減りました。そして90年代に、高性能膜を使ったダイアライザが次々と開発され、透析の質が格段に向上したのも印象に残っています。
また、1995年ごろにはPTA(経皮的血管形成術)が普及しはじめ、シャントトラブルに対して、身体的負担の少ない手術が可能となりました。
さらに2000年ごろからは、プライミングから回収までを行う全自動透析装置が普及しはじめ、スタッフの負担が軽減した点も臨床的には大きなポイントです。
そして2008年に日本透析医学会より「透析液水質基準と血液浄化器性能評価基準2008」が提示され透析液の正常化が定着したことは、HDFの浸透を裏打ちする出来事といえますね。

薬剤についてはいかがでしょうか。

水口1990年のエリスロポエチンの登場です。これにより、心不全の死亡率が急激に下がりました。そしてもう一つ、2007年のシナカルセト発売もインパクトが強く、副甲状腺摘出手術が激減したのを覚えています。

透析液、透析機器、ダイアライザ、シャント手術、薬剤・・・透析治療ではいかに多くの要素が関わっているか、あらためて思い知らされます。では逆に、今後、透析医療に進化の余地があるとすれば、どんな点でしょうか。

水口一つは、HDFに適したフィルターの開発でしょうね。今のHDFフィルターはHDのダイアライザの流用品の域を出ないと私は考えていますが、それが大量濾過を行うHDFにふさわしいか、ハウジングやファイバーの内径から見直す必要はあると思います。
また、シャント狭窄への対応も重要です。現在は狭窄した後にPTAなどの外科的治療を行っていますが、今後は、狭窄そのものを防ぐような薬剤の登場が期待されます。
他にも、HDFの大量置換に適した透析液や、在宅透析に適した家庭用の透析機器の開発など、進化の余地はまだまだありますね。

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