透析をするということ

透析療法の基礎知識

透析をするということ

政金 生人 先生

2016.04.01

政金 生人 先生(矢吹病院 院長)

透析の目的は、もはや「生きること」だけではない

「あなたにとって透析とはなんですか」。
「あなたの透析はよい透析ですか」。
そう問われた時、皆さんはどのように答えますか。

透析治療は約60年前の戦地において、外傷から起こる急性腎不全を治療するために開発され、その後慢性腎不全の治療にも使われるようになりました。急性でも慢性でも、透析治療は腎不全から命を救う治療であり、それは今も昔も変わりありません。
しかし、透析技術や医療の進歩により、30年、40年という長い期間透析を続けている患者さんがたくさんでてきました。また近年は、歳をとっても皆さんお元気で、80歳代や90歳代で透析を始めることは決して珍しくはありません。
透析治療の目的は命を救うことはもちろんなのですが、長期や高齢の患者さんが増えてきたのをきっかけに、透析をしながらいかに毎日を元気に過ごすかということに焦点が移ってきました。

不快な症状や合併症・・・それは「透析不足」が原因

慢性腎炎や糖尿病、高血圧症による腎臓の障害は、長い年月をかけてゆっくり進行します。ゆっくり進むため、痛い苦しいなどの自覚症状が出にくく、腎機能障害の発見が遅れて、気がついたときには透析が必要になっていた、ということも少なくありません。

健康な腎臓の働きが100%とすると、多くの患者さんが透析を始めるのは、腎臓の働きが7〜8%程度になる頃です。透析を始めた当初、その残りの腎臓の働きに透析による毒素の除去が加わるため、「すごく楽になった。こんなことならもっと早く始めたらよかった」という患者さんもいます。
しかし、透析が始まるとだんだん尿量が減少して、数年するとほとんど尿が出なくなります。皮膚のかゆみや色素沈着、足のイライラ感、不眠などの症状が出てくるのは、ちょうどこの頃です。

こうなると腎臓の働きはほぼ0%であり、透析治療だけで生命を支えていることになりますが、さて透析治療は腎臓のどれだけを肩代わりできているのでしょうか。標準的な1回4時間・週3回の血液透析治療では、1週間で10%程度、腹膜透析では5%程度にしかなりません。これがかゆみや色素沈着など透析特有の症状が出る原因であり、動脈硬化やアミロイド症など透析者のいろいろな合併症を発生させ、寿命を短縮させる原因です。

わが国の透析治療の成績は世界1位ですが、その治療技術をもってしても、1回4時間・週3回の透析では「透析不足」であり、そのためいろいろな症状や合併症がでてくるのだと理解することが大切です。リンが高いのもカリウムが高くなるのも、透析が腎臓に比べて力不足だからなのです。

「よい透析か」の答えは、自分の身体の中にある

「どうしたら元気で長生きできるのですか?」「元気な長生きにはどんな透析がよいのですか」と患者さんからよく尋ねられます。この質問はとても難しいようで、実は意外に簡単なのです。それは自分がどれだけ元気か、自分にはどんな症状があるのかということを観察すればよいのです。
最近、透析に関連した症状、例えば透析後に長引く疲労感、かゆみや不眠、抑うつ感は、長生きには赤信号だとういうことがわかってきました。そして、これらの透析患者さんのいろいろな症状は、「透析不足」が重要な原因の一つだと話しました。つまり、十分な毒素の除去によりかゆみや不眠がない、透析後は疲労感がなく元気に毎日を過ごすことができる。これが長生きできる透析、「よい透析」を受けているということなのです。

「透析後に楽だったらよいのなら、3時間にして除水量も減らして、血流量も落としたらどうか」と考える方もいるかもしれません。確かに効率を落としたその時、数回は楽かもしれません。しかし、徐々に毒素や水分が蓄積して体調はだんだん悪くなるので、その場しのぎはだめなのです。

世界には1回8~10時間の透析を週6~7回行っている人たちもいます。ベッドの都合など病院で行うことは難しいので、自宅で夜間寝ている間に透析をします。かゆみ、いらいらなど不快な症状は全くなく、寿命は腎臓移植を受けた患者さんと同じです。十分な毒素の除去というのが前提になっているのです。

「よい透析」には、患者さんと医療者が協力しあうことが大切

透析治療の目的は、皆さんの学業、仕事、趣味、遊びなど「こんな風に暮らしていきたい」という希望を叶えるための手段です。そのためには、毒素を十分にとり、かゆみや不眠などの不快な症状がなく、毎日を快活に過ごすことができる「よい透析」が必要です。
自分に症状がないか、毎日元気で過ごせているか、自分の体調をよく観察して透析室のスタッフに伝えましょう。透析患者さんと医療者は協力し合って、その人にあった良い透析の条件を設定していくのです。

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