「濾過」には補充液を注入する必要がある
大きな老廃物を取り除く効果的な方法は、「透析」に「濾過」を取り込むことです。そのためには、積極的な濾過とこれを補う補充液の利用が必要になります。このような治療を血液透析濾過(HDF)といいます。
濾過の方式にもよりますが、HDFでは少ない場合で5L、多い場合には100Lもの血液を濾過して、それに替わる液体を血液回路に注入します。この液体は、補充液(または置換液、または希釈液)と呼ばれますが、製薬会社から医薬品として売られています。
ところが、この補充液(医薬品)の代わりに、透析液の一部を補充液として血液回路に注入する方式のHDFが、わが国では2012年の4月から健康保険で認められました。このようなHDFのことを、「オンラインHDF」と呼びます。
このオンライン治療は、血圧の安定化にも有効であることが、イタリアで行われた大規模な研究で明らかになっています。血圧が落ちてきたときに、生理食塩液を加えることで患者さんの状態が少し回復することは、よく知られた事実ですから、これはむしろ当然といえるでしょう。
I-HDFとは、間欠的に補充液を加える小規模のHDF
それでは、十分に注意しながら除水をしても、毎回のように血圧が落ちてしまう患者さんの場合には、どうしたらよいでしょうか?――治療を始める前に、一定の時間ごとに補充液がはいるようにプログラムをしたらよいでしょう。それもできれば、スタッフの手を煩わせることなく、自動的に予め決められた量が、透析液からオンラインで補充液として加えることができれば、うまくいきそうです。
このように、間欠的に補充液を少量加える小規模(置換液量は全量でも1リットル以下)のHDFが、I-HDF( I は「間欠的補充」を意味する “Intermittent Infusion” に由来)です。
補充液を加える方法は2通りあります。一つは、
・通常のオンラインHDFと同じように、血液回路に直接注入する方式
で、もう一つは
・ダイアライザで一時的に、透析液側から血液側への濾過(「逆濾過」ともいいます)をかける方式
です。
特に後者では、ダイアフィルタ(HDF用のダイアライザ)の膜の内側表面にできる血液中成分の付着や濃度のかたよりを、逆濾過で吹き飛ばしてくれる効果が期待できるため、物質除去効率の低下が少ないといわれています。
通常の透析では、治療の進行に伴い水分が枯渇して、体の深部では小さな血管がさらに細く閉まって、血液や物質の流れが悪くなると考えられます。
I-HDFでは、間欠的に補充液が入ることで、細くなった血管がまた開いて、体の深部から老廃物を掻き出す効果が期待できる、ともいわれていますが、これについての結論を出すにはもう少し時間が掛かりそうです。
I-HDFは現在、医師をはじめスタッフの皆さんにもとても関心の高い治療法となっています。これからの発展に期待しましょう。