HDFとはどのような治療か
HDFはhemodiafiltrationの略で、日本語では血液透析濾過と呼ばれています。普通の血液透析(HD)を行いながら余分に濾過をかけることで、毒素の除去効率を高めようとする治療です。
ただ、余分に濾過をかけると血液中の水分が出てしまうので、水分を補充しなくてはいけません。
補充には2つの方法があり、1つは瓶やプラスチックバッグに入った補充液を使用して行う「オフラインHDF(off-line HDF)」です。以前はこの方法が主流でしたが、近年はもう1つの、透析液を清浄化し補充液として使用する「オンラインHDF(on-line HDF)」が増えています。
オンラインHDFのうち、フィルターの手前で補充液を血液回路内に注入する方法を「前希釈法」といいます。一旦希釈された血液がフィルターに入り、透析と濾過を受けます。一方、血液がフィルターを通った後で補充液を注入する方法が「後希釈法」です。
HDでは血液中の毒素は透析膜を通り抜け、透析液の中に拡散して出ていきます。しかし拡散で毒素が移動する力は弱く、分子量の大きな毒素になると、透析膜の小さい穴をくぐり抜けて出て行くことが困難になります。
HDF治療では、濾過をかけることで水の流れを作り、分子量の大きな毒素でも透析膜の小さい穴を通れるようにします。そのため、濾過量が大きいほど毒素の除去効率が良くなります。
ヨーロッパで行われた臨床研究の結果では、可能な限り大量の濾過をかけた後希釈オンラインHDFが、患者さんの死亡率を低下させると報告されています。
わが国では前希釈オンラインHDFが選択されていることが多く、ヨーロッパに比べてより高性能なフィルターを使用しており、ヨーロッパとは異なるHDFの文化があるように思われます。
HDFはどんな患者さんに適しているか
HDF治療の本来の目的は、分子量の大きい毒素までしっかりと除去することです。しかしそれは同時に、体に必要な血液中のタンパク質であるアルブミンまで除去してしまうことにつながります。
アルブミンが少なくなると、血圧が下がりやすくなったり、むくみが出やすくなったり、さらには死亡率も上昇するといわれています。
ですから、たくさん食べてたくさん運動する、毒素の産生量も多いけれどアルブミンも十分にあるような患者さんが、HDF治療に適しているといえるでしょう。
逆にHDFがあまり適さないのはどんな患者さんか。その人にはどのような透析がいいか
高齢の患者さん、栄養状態の悪い患者さんは、HDFに適していないかもしれません。
毒素の産生量が少なくアルブミンも低い場合には、HDFで強力に毒素を抜くよりも、アルブミン透過性の低いダイアライザを使用してHDを行う方が良いと考えられます。
しかし、HDFではフィルターや濾過量を調整することでよりマイルドな治療を行うこともできます。
また、HDFには治療中に血圧低下が起こりにくいという効果もあります。
近年注目されている間歇補充型HDF(I-HDF)は、HDFの補充液を間歇的に注入する治療法です。I-HDFの利点として、血圧を安定させる効果があるとされています。
ですから、HDFが適さないという患者さんは存在せず、患者さんの状態に合わせたHDFの処方をしていくことがいいのかもしれません。