在宅血液透析の実施条件

透析療法の基礎知識

在宅血液透析の実施条件

若井 陽希 先生

2016.12.09

若井 陽希 先生(品川ガーデンクリニック 院長)

在宅血液透析はルールにのっとった自己管理が大切

在宅血液透析は基本的に安全な治療です。しかし、緊急時の対応等については、医療従事者が常にそばにいる通院血液透析よりも、当然リスクが高くなります。よって、心疾患をお持ちの方で発作の可能性のある方、血液疾患をお持ちの方で止血等が困難となる可能性がある方、透析中の血圧の変動が大きい方等には、通院透析の方が好ましいと思われます。また、ご自宅での治療であるため、ルールにのっとった自己管理が大切です。

それ以外にも、在宅血液透析を行う上で必要とされることはいくつかあります。それぞれの条件につき、順を追って説明させていただきます。

(1)付き添い者または介助者が必要です

当院の研修では、在宅血液透析に関わる手技はすべて患者さん自身で、一人でできるように指導しています。よって、一緒に研修を受け、すべての手技を理解してくれているような介助者は、いていただければより好ましいですが、必須としてはおりません(必須としている施設もあります)。しかしながら、安全確保のため、自宅で、お独りで在宅血液透析を行う事は厳禁とさせていただいております。必ず付き添いの方が必要です。

当院が指定している付き添いの方の条件は、
・治療中常に患者さんと同一住宅内の比較的近い位置にいることができる
・緊急時に救急車の要請やクリニックへの連絡ができる
・出血時に圧迫止血ができる。透析機器の緊急停止ができる
・患者さんが在宅血液透析を行う事に十分同意している
の4点です。これらを満たしている付き添いの方が、在宅血液透析を行うためには必須です。

(2)自己穿刺が必要です。バスキュラーアクセスの種類によっては在宅血液透析をできないこともあります

穿刺は、患者さん自身がしなくてはなりません(ただし、ご家族が、医師、看護師、臨床工学技士の資格をお持ちの場合は、ご家族が穿刺をすることもできます)。自己穿刺に不安を感じる患者さんは多くいらっしゃいますが、実際に自己穿刺がうまくいかず、在宅血液透析の導入をあきらめる患者さんはまれです。自己穿刺に慣れると、患者さん自身がご自分専任の穿刺者となるので、失敗も少なく安定した穿刺ができるようになります。
バスキュラーアクセスについては、(人工血管ではない)通常のシャントが最も理想的ですが、人工血管を使用したシャントをお持ちの方でも、通常在宅血液透析は可能です。しかし、穿刺や止血に十分な注意が必要です。また、人工血管感染等のトラブルの早期発見・早期対応が必要ですので、難易度とリスクは高くなります。
動脈表在化は、自己穿刺、自己止血が極めて困難となると思われるため、原則として在宅血液透析はできません。
留置カテーテルでの在宅血液透析は可能ですが、人工血管と同じく感染対策が必要です。
なお、通常のシャントであっても、穿刺が極めて難しい方では在宅血液透析ができないこともあります。

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