腹膜透析のメリットを生かすために
腹膜透析の最大のメリットは、「体に優しい、体への負担が少ない透析である」という点です。また、自由度の高い生活が可能で、社会復帰が容易となるほか、血液透析に比べて残腎機能が長く保持され、尿量が維持されている間は水分摂取制限がないという点も、メリットとして挙げられます。
「長期に残腎機能を維持できる」という腹膜透析の利点を最大限に生かすという観点から、近年、「腎代替療法は腹膜透析から始める」という意味の「PD first(PDファースト)」という言葉が生まれ、勧められています。また、最初にPDを選択し、最適な時期に血液透析(HD)に移行するほうが、HDを先に導入する場合に比べて予後がよいという、海外の報告もあります。
最近は、従来の2Lの1日4回のバッグ交換ではなく、少量の腹膜透析液(例えば1.2L)で、低頻度(例えば1日2〜3回)のバッグ交換を開始し、尿量、残腎機能が低下するのに合わせて、透析量、回数を増やす「インクリメンタルPD」(図1)を採用する施設が多くなっています。
腹膜透析が禁忌となる場合
しかしながら、中には腹膜透析が実施できない患者さんもいます。以下に腹膜透析が禁忌となる場合を示します(図2)。
腹膜透析が適しているか、検討しなければいけない場合
また、禁忌ではないですが、腹膜透析が適しているかをあらかじめ検討しなければいけない場合もあります(図3)。
こうした、禁忌および検討を要する患者さん以外は、一般的に適応可能と考えています。
腹膜透析のよい適応と考えられる場合
逆に、むしろ腹膜透析の実施が好ましい患者さんもいます。
(1)心機能の悪い腎不全患者さん
腹膜透析の特徴は、
・体液バランスが一定であること
・循環器系への影響が少ない透析であること
・体への負担が少ない透析であること
です。こうしたことから、心機能の悪い腎不全患者さんには、腹膜透析が適しています。
しかしながら、除水量には限界があるので、食塩摂取が過剰になると、浮腫や高血圧をきたすことがあります。そのため、食事制限を含めた自己管理をしっかり行うことが大切です。
したがって、自己管理があまりにもできない患者さんは、腹膜透析は適さないと考えます。
(2)高齢者の腎不全患者さん
日本透析医学会の調査によると、2013年の透析導入患者さんでもっとも割合が高い年齢層は、男性、女性とも75歳~80歳未満でした。
しかも、導入平均年齢は、男性67.9歳、女性70.4歳と高齢化が進んでいます。
こうした高齢の透析患者さんにとって、腹膜透析は身体的・精神的にいろいろなメリットがあります(図4)。
腹膜透析は在宅医療であり、治療を受容しやすい点も特徴です。 現在、地域包括ケアシステムにのっとり、多くの地区で、訪問看護師やヘルパーを交えた高齢者の腹膜透析のためのシステム作りが進められています。