透析療法の基礎知識

透析のしくみ

吉川 和寛 先生

2016.04.08

吉川 和寛 先生(岩手医科大学 講師)

透析療法で代替できない機能は、薬物や生活管理で補う

透析のしくみはとても複雑で巧みです。各記事で他の先生方が詳しく説明してくださいますので、私はその概要を述べたいと思います。
「透析療法のメリットとデメリット」で、「透析療法はあくまで働きの『一部』を代替しているにすぎず、完全な腎臓の替わりにはなりません」と説明しました。
「腎臓の働きの一部」というのは、具体的には、老廃物の除去、水分の除去、電解質の調整、pH(酸塩基平衡)の調整です。
一方、血液を作る手助け(エリスロポエチンの産生)、骨の調節(活性化ビタミンDへの変換)や血圧の調節(レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系の調節)は現時点での透析療法ではできないため、内服薬・注射薬や生活管理を組み合わせて補います。

「拡散と濾過」という物理現象を利用

透析の原理は、学問的には半透膜(血液透析の場合はダイアライザ、腹膜透析の場合はご自身の腹膜)を利用した「拡散と濾過」です。半透膜とは、ある物質は通過させ、別の物質は通過させない特徴を持った膜のことです。

透析の治療対象となる老廃物や水分・電解質・酸は、血液中に溶けて常に体内を流れていますので、半透膜を間に挟んで、その片側に血液を、反対側に透析液を持ってくると、老廃物・電解質・酸(溶質)は半透膜を通じて濃度の高いところから低いところへ移動し(拡散)、水分(溶媒)は血液と透析液の濃度が同じになるよう、濃度の低いところから高いところへ逆に移動します(浸透)。この物理現象を利用して、老廃物・酸・不必要な電解質(溶質)を血液中から透析液中に捨て、逆に必要な溶質を透析液から血液中に補うわけです。

ただ、水分(溶媒)は、この物理現象だけでは逆に透析液から血液中に入ってきてしまうため、血液透析ではダイアライザ内で主に血液側に圧をかけ、水分(溶媒、正確には溶液)を外に捨てます(濾過)(図)。

図:拡散と濾過

一方、腹膜透析ではこの圧をかけることができませんので、腹膜透析専用の透析液にはうまく水分も抜けるように工夫がなされています(主にブドウ糖を透析液に混ぜています)。

効率のよい透析に欠かせないものとは

透析療法で、より効率がよく、より腎臓に近い溶質除去能を達成するために、世界で研究が続けられています。透析液の工夫、ダイアライザの性能向上など多岐に渡ります。しかし、効率のよい透析療法に必要不可欠なのは、質の良い透析アクセス(血液透析の場合はバスキュラーアクセス、腹膜透析の場合は腹膜透析用カテーテル)であり、その作製技術(手術)の腕を、我々専門医は常に磨いています。

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