透析量を増やすために〜ダイアライザの選択

透析療法の基礎知識

透析量を増やすために〜ダイアライザの選択

山下 明泰 先生

2018.06.01

山下 明泰 先生(法政大学 生命科学部 教授)

「透析量」を2つの視点から考えてみる

そもそも「透析量」とは何のことでしょうか?
実はその答えは、私たち専門家にとっても簡単ではありません。

ここでは2つの方向から捉えることにしましょう。
一つは、「尿素をはじめとする小さな老廃物(小分子溶質と呼ばれることも多い)を、どれだけたくさん取り除くことができるか」ということです。
もう一つは、「大きな分子の代表として知られるβ2-ミクログロブリン、あるいはそれよりも大きな尿毒素をどれだけ取り除くことができるか」ということです。

この2つの観点から、透析量とダイアライザや治療条件の関係について考えてみましょう。

「小さな分子を取り除く」なら、ダイアライザの違いはほとんど影響しない

まず、小分子溶質の除去効率ですが、普通、Kt/Vという値を使って評価します。Kはダイアライザの性能を表すクリアランス、tは治療時間、Vは患者さんの水分量です。

「重さ」や「長さ」にはそれぞれ「m」や「kg」の単位があるように、K、t、Vにもそれぞれ「mL/min」、「min」、「mL」などの単位があります。しかし、「Kt/V」という塊になると単位が消えてしまいます。

わが国では1回の治療あたりで、この値が最低1.2になるように、できれば1.4になるように治療をすることが、日本透析医学会から勧められています。統計で見ると、現在のわが国のKt/Vの平均値は1.39ですから、多くの患者さんは適正な治療を受けていらっしゃると思います。

この値を大きくするには、治療時間(t)を延長するか、クリアランス(K)を大きくすればよいですね。しかし治療時間が4時間に決まっている場合には、後者を選択することになります。

Kを大きくするために、ダイアライザの膜の性能や面積がどれほど影響するかというと、実はほとんど効果がないことが分かっています。
では透析液流量を上げるのはどうでしょうか?――実はこれもほとんど効果がありません。

一番大きく関係するのは、血液の流量です。でも血流量は、患者さんの心臓の機能、透析中の血圧の安定性、あるいはシャント(アクセス)の状態を十分に勘案した上で決められていますので、むやみに大きくすることはできません。注意しましょう。

「大きな分子を取り除く」とき、ダイアライザの違いによる影響は大きい

次に、β2-ミクログロブリンを含む大きな分子の除去の場合ですが、これは小分子溶質とは違って、ダイアライザの膜の性能や面積が大きく影響します。それに比べると、血流量の効果はむしろ小さいといえます。

2016年3月まで、わが国のダイアライザは健康保険上、β2-ミクログロブリンの除去性能に基づき、5種類に分類されていました。このうちIV型、V型と呼ばれていた高性能モデルが、全体の97%以上を占めるようになっていました(現在は分類法が変わりました)。
膜面積も大きな方が大きな尿毒素を取り除くには有利ですが、大きなダイアライザには、血圧を低下させるリスクもありますので、適切な選択が大切です。

 

以上、小分子溶質と大分子溶質とでは、取り除くための作戦が異なるということがおわかりいただけたでしょうか?
ダイアライザは、透析条件(血流量、透析液流量、限外濾過流量)と血圧の安定性や合併症の有無を考慮した上で、総合的に適切なモデルが選択されなければなりません。

* 日本透析医学会, 維持血液透析ガイドライン:血液透析処方. 透析会誌 46: 587, 2013

ページ上部へ