透析を上手に導入することは、患者さんの人生を変えるかもしれない・・・。やりたくなくても始めなくてはいけない、どうせ始めるなら少しでも苦痛を少なくしたい。このように思う患者さんも少なくないはずです。シャントを作って上手に管理することが、ある意味で近道かも知れません。少しこの稿でお付き合いください。
シャントの話を聞くときは生涯のおしまい?
透析を導入する時期は、どうしても患者さんごとに異なるものです。体の大きさや合併症、残存腎機能も異なるため、透析でサポートするべき状況やそのやり方も異なってきます。主治医や医療スタッフから透析の話を聞くときには、どの患者さんも目をそむけたくなります。透析を導入することを喜ぶ患者さんはいらっしゃらないのですが、本当に悲しい事なのかを考える必要があります。
透析を行うメリットがわからないと言われます。適正な例えかわかりませんが、私は患者さんには次のように説明しています。患者さん自身がテストを受験した時に、実力が10点くらいとしましょう。定期的な透析治療を継続することは、補習を受けているのと同じで、約20点の上乗せをしてくれる感じです。つまり、透析を開始すると、上乗せ分を入れた30点になるわけで、実力だけの10点と比較して相当プラスになります。
とはいえ、どちらも悪い点数には変わりなく、自覚症状には大きな差はないかもしれません。しかし、医学的に考えると、心臓や頭を守ってくれるはずで、当然30点を選んだ方がいいでしょう。
シャントは使えるようになるまでに時間が必要です
透析の穿刺はシャントに行いますが、そのシャントは、もともと体表にある皮静脈と言われる細い血管です。しかし、血管が細くて血流量が少ないとなると、十分な透析が出来ず、目的が達成できないことになります。そこで、血流量をたくさん確保する目的で手術を行う必要があります。
穿刺部に多くの血液が流れるように、手術では動脈と静脈を短絡(たんらく)させます(図)。
短絡後は、時間をかけて血管の成長を待ちます。そのために必要と思われる期間を逆算する必要があります。
さまざまな研究調査によると、日本では手術後早期に使用し始めることが多く、結果としてシャント不全と呼ばれる状態になりやすいといわれています。透析を導入しなければいけない患者さんにとって、とても痛い話です。