透析療法の基礎知識

シャントの種類 〜自己血管

新宅 究典 先生

2016.07.29

新宅 究典 先生(土谷総合病院 腎・血液浄化療法科 主任部長)

血液透析にはバスキュラーアクセスが必要

血液透析をするには、血液を血管内からある程度の血流で取り出して透析し、再び血管内に返すためのバスキュラーアクセスが必要です。
バスキュラーアクセスには、自己の動脈と静脈を直接つなぐ自己血管動静脈瘻(自己血管内シャント)、動脈と静脈の間に人工血管を介在させる人工血管動静脈瘻(人工血管内シャント)(図1)のほか、動脈表在化やカテーテルがあります*1

図:自己血管内シャントと人工血管内シャント

日本の血液透析患者さんのシャントの大半は自己血管

自己血管内シャントは、開存率が高く、感染に対して強いとされています。わが国においては、自己血管内シャントが89.7%を占めています*2
腎機能が低下し、専門医から透析導入が必要との診断を受けた場合、あらかじめ内シャントの手術を受けておくと、カテーテルの使用を回避でき、感染の危険性は低くなると考えられます。
しかしながら、緊急で透析導入が必要となる場合もあります。その際にはカテーテルにより透析を開始し、後日、内シャントを作製します。

内シャントの作製部位

内シャントの作製部位は、術前に血管の太さ、狭窄や石灰化の有無などを、視触診や超音波検査などにより判定し、決定します。
一般的には、前腕末梢(手首近く)に作製します。利き腕ではない方が優先されますが、血管の状態によっては利き腕の側の方がよいことがあります。
橈側(親指寄り)の前腕末梢が一般的ですが(図)、尺側(小指寄り)に作製することもあります。

図:前腕橈側内シャントに利用する動脈・静脈

前腕の末梢側以外では、前腕中央、または肘の手前に作製することもあり、個々の患者さんの血管の状態によって、最適な部位を選択します。

内シャント作製手術

麻酔は、多くの場合は局所麻酔ですが、より広い範囲に麻酔が行きわたる「伝達麻酔」を行う施設もあります。通常、手術時間は1時間程度ですが、血管が細かったり、石灰化が強かったりすると、それより長くなることもあります。また、手術にあたり、外来で行うか、入院で行うかは施設によって異なります。
実際の手術手技ですが、数センチメートルの皮膚切開をし、動脈と静脈をつなぎあわせ(図)、皮膚を閉じます。

動脈の血液の一部を、静脈に直接流し込むことにより、静脈が太くなります。動脈から静脈に流れる血流が徐々に増加し、血管も太くなることにより、血液透析をするための針が刺せるようになります(図)。

図:内シャントの穿刺部位

手術から針が刺せるようになるまでの期間は、個々のケースにより異なります。穿刺開始は術後2週間以降がよいとされていますが*1、早期穿刺に関しては問題ないとする報告もあり*3、施設によって状況が異なるようです。

手術により生じうる合併症としては、①出血、②感染、③末梢虚血、④末梢神経障害、⑤静脈高血圧症 などが考えられます。

内シャント作製手術後の注意点

術後に患者さんに気をつけていただきたいことがいくつかあります。

まずは、手術した側の上肢が締まるようなことは避けて下さい。動脈と静脈を吻合し、静脈血流が増加していますが、血管の吻合部より下流を堰き止めることにより、血管が詰まったり、腕が腫れたりします。
腕時計やブレスレットなどは手術をした側の腕には巻かないようにして下さい。
冬場で、長袖を着る場合にも、袖口で手首が締まるようなセーターなどは避け、どうしても着用する場合は袖口のゴムの部分をのばすかゴムを切って下さい。
手首が締まらなければいいといって腕まくりをするのは逆効果で、かえって前腕全体がうっ血して腫れてしまいますので注意してください。

日ごろのシャント管理も重要

内シャントの術後に手の運動をすると血流が増加し、シャント化した静脈が太くなるといわれています。ゴムボールや硬めのスポンジなどを使って、握る→離すの動作を繰り返します(図)。
暇なとき、たとえば自宅でテレビを見ながらでもよいので、気づいたときに試してみてください。

図:市販のゴムボールを使ったシャント運動

日ごろから、シャント血管の状態を自分で観察するのもよいでしょう。血液透析を施設で行う場合、スタッフが透析日のたびにシャント血流を確認しますが、自分でも血管の上を軽く触れたり、シャントの吻合部付近を耳にあてたりすると、血液が流れているのを感じることができます。

血管が急に硬くなったり、音が聞こえなくなったりすると、血液の流れが止まっている可能性があり、カテーテルを使用した血管内治療、血栓除去術、内シャント再建術などが必要となる場合がありますので、かかりつけの施設に問い合わせてください。

*1 日本透析医学会, 慢性血液透析用バスキュラーアクセスの作製および修復に関するガイドライン. 透析会誌 38: 855,2011
*2 日本透析医学会, 図説 わが国の慢性透析療法の現況 2008年12月31日現在
*3 大平整爾 編, 日本メディカルセンター, バスキュラーアクセスを極める-その作製とマネジメント: 103, 2015

ページ上部へ