ドライウエイトとは適切な水分バランスの時の体重
人間の体に含まれる水分量は、本来、腎臓の働きにより適正に調節されています。しかし、腎不全患者さんではこのような腎臓の機能が喪失しているため、代わりに人工腎臓治療(血液透析など)で体の水分量を調節しなくてはいけません。
尿が出なくなってしまった腎不全患者さんの場合、不要な水分が体に蓄積してしまうようになります。人工腎臓治療でこの余分な水分を取り除く(除水)のですが、この時の基準になるのがドライウエイトです。
治療を開始する時、ドライウエイトに体重が戻るように除水量を設定するようにします(図)。例えば、ドライウエイトが60kgの患者さんが、62.5kgで治療に来られた場合、約2,500mL(施設により+αの調節をする場合もあります)の除水をおこなうことになります。
ドライウエイトは身体の状態を総合的にみて決められる
ドライウエイトは、体に浮腫みがないかどうか、血圧が適正にコントロールされているかどうか、胸部レントゲンで心臓が腫れていないかどうか、また胸に水がたまっていないかなどをみながら設定していきます。
しかし、患者さんが「楽だ」と思われるドライウエイトと、担当医が適正と考えるドライウエイトが一致しないこともあると思います。そのような場合、さらに心臓エコー検査をおこなったり、心臓に負担がかかった時に多く分泌される心房性ナトリウム利尿ペプチド(hANP)というホルモンを測定して参考にすることもあります。
身体の状態が変化すれば、ドライウエイトも見直す
ドライウエイトが本来あるべき値よりも重く(高く)設定されてしまうと、水分過剰の状態が続くことになります。血圧が上昇したり、心臓に負担がかかったりして、その結果心不全になってしまうかもしれません。
一方、ドライウエイトが軽(低)すぎると、無理な除水により血圧が下がってしまい、気分不良、こむら返りなどの原因になります(図)。
ドライウエイトは、いったん決まったらそのままずっと変わらないものではなく、体の状態により変化していくものです。体調が悪く食欲不振が続くようなら、当然体は痩せてくるので、ドライウエイトは下げないといけなくなります。逆に、食欲が旺盛になってくると、血圧低下や治療後の倦怠感が起こってくるので、ドライウエイトを上げる必要が出てきます。