透析処方はどうやって決められるか?

透析療法の基礎知識

透析処方はどうやって決められるか?

吉川 和寛 先生

2019.06.14

吉川 和寛 先生(岩手医科大学 講師)

透析処方とは透析治療を行う際の設定のこと

病院を受診すると、医師の診察(医療)を受け、治療の一環としてお薬を「処方」されることがあると思います。このように、「処方」とは一般に「病気に応じた薬の調合法」のことを意味しますが(広辞苑第七版)、透析治療にも「処方」があります。

透析における「処方」とは、透析をしている時にお薬を出してもらうことではなく、透析の際の治療設定のことです。
具体的には、透析膜の素材や膜面積、透析スケジュール、除水量、除水速度、血液流量(Qb)、透析液の種類、透析液流量(Qd)などです。(図)

図:透析処方の内容

ガイドラインに最低限守るべき透析処方の条件が示されている

これら処方が不適切だと、透析の基本である除水と浄化(溶質除去、毒抜き)がうまくなされず、透析患者さんの健康に悪影響を及ぼします。
もちろん、透析患者さんの体は十人十色、同じ人でも体調が日々違いますし、別の病気にかかり状態が変わることもあります。したがって、透析処方も患者さんごとに変わりますし、体調や状態に応じて変化するものです。

日本透析医学会の「維持血液透析ガイドライン:血液透析処方」には、安定した外来血液透析患者の最低限守るべき推奨として
・週3回1回4時間以上を確保すること
・Qb 200mL/min以上を確保すること
・透析液流量 500mL/min以上とすること
・ハイパフォーマンス膜ダイアライザーを用いること
と示されています。

実際の透析量は一部の物質の測定値でチェックしている

透析処方を決める上では、合併症の発生ができるだけ少なく、長生きできるよう、実際の透析量(浄化の具合、毒抜きの程度)が適切かどうかを知ることも重要です。

ただ、尿毒素には少なくとも90種類の物質があり、なかなかそれら一つ一つの除去量(抜け具合)を検討するわけにはいきません。そこで、小分子物質(サイズの小さな毒素)の代表として尿素から計算したKt/V(ケーティーパーブイ)という数値や、中分子物質(比較的大きな毒素)の代表として血中β2-ミクログロブリン濃度を調べています。
透析施設では定期的に透析前後採血を行い、これらの指標が調べられ、各透析患者さんへの透析処方が適切かどうかがチェックされているのです。

他にも、これら指標では推し量ることのできない貧血やミネラル・骨代謝(CKD-MBD)、栄養状態やサルコペニア・フレイル、健康関連QOLなど、評価項目にはさまざまなものがあります。

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