在宅血液透析とは

透析療法の基礎知識

在宅血液透析とは

若井 陽希 先生

2016.11.18

若井 陽希 先生(品川ガーデンクリニック 院長)

在宅血液透析で得られるさまざまなメリット

在宅血液透析(home hemodialysis:HHD)は、医師の管理のもと、患者さんご自身が自宅で血液透析を行う治療法です。
自宅に透析を行うための機器を設置して、患者さん自身が回路組立・穿刺・透析中の状態管理・返血等のすべての手技を行い、血液透析を行います。

在宅血液透析には様々なメリットがあります。自宅で好きな時に透析を行えることは当然のメリットですが、最大のメリットは、十分な量の透析を行えるので予後の改善が期待できることです。
透析は十分な時間をかけ、「緩徐」かつ「しっかり」と行う必要があります。これにより、食事制限を緩めることもでき、栄養改善や体作りが図れます。自宅では自由な時間に透析ができるので、より十分な透析を行いやすいといえます。また、通院透析は、原則として月14回までとなっておりますが、在宅血液透析では連日や隔日の透析も可能です。透析日数を増やすことで、十分な透析を「こまめ」に行うことができるので、体調の変動を少なくすることができます。

この、「十分な透析を行いやすい(緩徐+しっかり+こまめ)」ということが、在宅血液透析の最大のメリットですが、他にもいろいろなメリットがあります。
自宅で好きな時に行えるので、「家族や友人との時間を持ちやすい、仕事も行いやすい」と言えますし、もちろん、通院の負担も大幅に減ります。
さらには、「自分専用の透析用機器ができるので、透析液等の変更が行いやすい(処方透析)」「院内感染のリスクがない(インフルエンザ、感染性腸炎、肝炎、HIV等)」などといったメリットもあります(図)。

図:在宅血液透析のメリット

実施面での問題が普及率の低い理由に

このように多くのメリットがある在宅血液透析ですが、現時点でのわが国での普及率は非常に低いものとなっています。2014年の在宅血液透析患者数は日本全国でおよそ530人であり、全透析患者さんの0.2%にすぎません。
普及率が低い理由としては、「医療従事者がいないところで、自分で実施しないといけないので怖い、難しそうでとてもできない」「自己穿刺が怖い」「実施している施設が極めて少ない」「自宅の準備が難しい」「治療に付き添ってくれる家族がいない」等の問題点が指摘されています。
ただし、近年、実施施設は確実に増加してきており、患者数も漸増してきています。

腹膜透析と在宅血液透析の違いとは

なお、「腹膜透析とは違うのですか?」という質問をよくいただきます。
腹膜透析は、お腹の中の腹腔という空間につながる管を腹部に留置し、その管を使って、腹腔内に特殊な液を注入することで透析を行う治療法です。腹膜透析も在宅血液透析も自宅で透析を行うので、共に「在宅透析」ではありますが、しくみが全く異なる別の治療法です。

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