透析のしくみの基本は「拡散」と「濾過」
慢性腎臓病ステージ5D(末期腎不全)で行う腎代替療法には、腎移植のほかに、透析療法があります。透析療法は、血液透析(hemodialysis:HD)、血液濾過透析(hemodiafiltration:HDF)、腹膜透析(peritoneal dialysis:PD)に分類されます。
HD、HDF、PDは、腎臓のおもな機能である老廃物除去と水分調節を行いますが、そのしくみには、拡散と濾過(浸透圧較差)という、物理的な機序が生かされています。
血液中の老廃物は、拡散によって透析液へ移動
拡散(diffusion)は、透析療法の基本となる物理的現象です。
溶質濃度の違う2種類の液体が、半透膜という目に見えない小さな穴の空いた膜を境にして接すると、濃度の高いものは薄い方へ、薄いものは濃い方へ移動します。
透析は、その濃度較差(のうどかくさ)による性質を利用し、半透膜(透析では透析膜:ダイアライザといいます)を使って物質を除去します。これにより、腎不全患者さんの老廃物を含む血液中の物質は、それらが含まれていない透析液へと移動します。
拡散の度合いは、さまざま要因に影響を受けますが、老廃物の抜けやすさはその分子量で決まります。特に、分子量の小さい老廃物(BUN:尿素窒素、Cre:クレアチニンなど)は、拡散で除去されやすくなります(図)。
濾過は圧力をかけて膜を通す除去方法
濾過(convection、filtration)は、圧力をかけて物質に透析膜を無理やり通り抜けさせる方法です。
拡散では除去されにくい大きな分子量の老廃物は、濾過による除去が有効です。拡散(=自分勝手に動いて膜を通り抜けること)は難しくても、濾過であれば、膜に通過できる穴さえ開いていれば除去可能というわけです。
HDFの「F」は、このfiltration(濾過)を指しています。HDと比べると、これまで除去できなかった大きな分子量の老廃物が除去できます(図)。
日本の主流はHDだが、近年はHDFも普及
日本ではこのHDが腎代替療法として一番普及している治療法で、施設、さらには自宅でも安全に行われる治療法になっています(図)。また、2012年度の診療報酬制度の改定以来、オンラインHDF療法も普及してきました。