透析療法の基礎知識

透析量を増やすために ~血流量

前田 兼徳 先生

2017.04.07

前田 兼徳 先生(前田医院 副院長)

透析量を増やす近道は血流量の増加

透析量を増やすために 〜時間でも書いたように、血液透析治療の特徴から、他の条件を変更せずに治療時間(t)のみを延長すれば、透析量の指標であるKt/Vが増加します。また、血流量や透析液流量、ダイアライザの膜面積を増やせば、ダイアライザのクリアランス(K)は増加し、Kt/Vも増加します。
このように、透析量に直接影響を与えるものには、1回あたりの透析時間、血流量、透析液流量、ダイアライザの膜面積などがあります(図)。

図:透析量に影響を与えるもの

週あたりの透析量で評価する場合は、1週間の総透析時間や透析回数も重要です。これらの要素を増やせば透析量は増加しますが、逆もまたしかりです。
ところで、透析時間、透析回数、透析液流量、ダイアライザの膜面積を増やすと、透析施設の負担や医療費が増す可能性がありますが、血流量については、コンソールの操作一つで増減できるのでそういった懸念がありません。ですから、透析量を増やすのに「血流量」は最も簡単にコントロールできる要素といえるでしょう。

日本は透析液流量に対して血流量が少なめ

2008年末の調査では、わが国の施設血液透析患者さんの平均血流量は197.4mL/分で、180mL/分以上240mL/分未満が全体の73.4%を占めていました(図)。また、透析液流量の平均は486.7mL/分でした。

図:わが国の血液透析患者さんの血流量

効率の面から血流量と透析液流量の比率は1:2程度が望ましい、という現況を考えると、平均的な透析施設では血流量は240~250mL/分程度が妥当、ということになります。しかし、血流量240mL/分以上の施設は全体のわずか10.5%であり、今のところわが国では、透析液流量に対して効率的な血流量で血液透析が行われているとは言い難いのかもしれません。

大きい分子量の除去は、血流量を増やしても頭打ちになる

さて、血流量と溶質除去の関係でいうと、尿素(分子量60)やクレアチニン(分子量113)、各種アミノ酸などの小分子量物質に関しては、血流量が増えれば除去量もほぼ直線的に増加します。その傾向は、血流量200mL/分以上でもある程度までは同様です。
しかし、ミオグロビン(分子量17,000)などの低分子量蛋白では、血流量200mL/分未満で除去量がほぼ一定となります。つまり、小分子の除去は血流量(および透析液流量)に大きな影響を受けますが、分子量が大きくなるにつれて、溶質の除去量は血流量(透析液流量)を増やしても頭打ちになるということです。
ただし、現在の市場の90%以上を占める高性能ダイアライザは、β2ミクログロブリン(分子量11,800)レベルの分子量までは、拡散で除去効率が増加することがわかっています。また、血流量が増えるとダイアライザ内での逆濾過(※)量も増加することから、これら高性能ダイアライザの能力を十分に発揮するためにも、適切な血流量の確保が望まれます。

※ 逆濾過:通常の濾過とは逆で、透析液から血液へ濾過が起こる現象。ダイアライザの血液の出口付近で起こりやすい。

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