透析量を増やすために~時間(長時間透析)

透析療法の基礎知識

透析量を増やすために~時間(長時間透析)

前田 兼徳 先生

2017.01.20

前田 兼徳 先生(前田医院 理事長)

「週3回×1回4時間」にとらわれない

透析に関する世界的な研究「DOPPS」の報告(2012年)によると、11の国と地域で標準的に行われている週3回の施設血液透析の1回あたりの治療時間は、だいたい4時間程度です。また、わが国の調査(*)によると、施設血液透析の時間と回数の平均は、1回3.92時間、週2.95回となっています。
しかしながら、健常腎が1週間168時間をひとときも休まずに働いていることを考えると、たかだか週12時間程度の血液透析で腎臓の機能を代替しようとするのは、末期腎不全患者さんにとって決して十分とはいえません。これくらいの透析量では、場合によっては、患者さんは厳しい食事制限を余儀なくされ、多数の薬剤(リン吸着薬や降圧薬など)を内服しなければならないかもしれません。
さて、「適正な透析条件」については、世界中を見渡しても今のところ明確な定義が存在しません。したがって、医療者側も治療を受ける側も、「週3回×1回4時間」という四角四面の形態にとらわれるべきではないでしょう。

長時間透析のメリット

血液透析での尿毒素の除去量は、単位時間あたりの標的物質の除去効率(K)と透析時間(t)の掛け算で求められます。つまり、同一の透析条件であれば、透析時間(t)が長くなるにつれて尿毒素の除去量が増えることになります。また、透析時間を延長すると、除水や体液バランス、酸と塩基のバランスの補正が穏やかに達成できるので、循環動態や生体恒常性の維持という面でも、短時間の透析よりもメリットがあると考えられます。
長時間透析とは、週3回・1回6時間を基本とした、週18時間以上の透析のことを指します(図)。

図:平均的な透析と長時間透析

長時間透析には、緩徐に、より多くの尿毒素や過剰水分を除去できるという特長があるので、平均的な透析治療と比べて、合併症の減少や食欲増進、栄養状態の改善効果が期待できます。除水が緩やかなためドライウェイトが適正となり、透析中や家庭血圧のコントロールが良好となるほか、短期的・長期的な心機能の改善・維持効果も報告されています。
また、血清リン値が低下してリン吸着薬の処方量が減る、血中ヘモグロビン値が上昇してESA(赤血球造血刺激因子製剤)の投与量が減る、降圧剤を減量・中止できる、といった、腎不全にかかわる様々な薬剤の削減効果も報告されています。そして、平均的な透析と比べて、生命予後の改善効果もたくさん報告されています(図)。

図:長時間透析のメリット

* 日本透析医学会, 図説 わが国の慢性透析療法の現況 2008年12月31日現在: 28

ページ上部へ