食事のポイント

透析患者さんの食事

政金 生人 先生

2016.04.01

政金 生人 先生(矢吹病院 副院長)

透析患者さんの頭を悩ませる問題に食事療法があります。水分、塩分、リン、カリウムなど気をつけなければいけないことがたくさんで、それに加えて昨今の健康食品ブームです。「このサプリメントを飲んでもいいかな」「水素水が体に良いって聞いたけど?」などなど、透析患者さんの食事にかかわる疑問や悩みは尽きることはありません。
しかし、この疑問や悩みも、それぞれに共通する理屈を理解することでだいぶ楽になります。そしてそれ以上に大事なことは、何をどう食べたらいいのかには、患者さんと医療者が理解して、共通認識にしておかなければいけない前提条件があるということです。

食事療法は、毒素の除去不足をフォローするための手段

「透析をするということ」でもお話しましたが、透析患者さんは4時間・週3回の透析をしっかりやったとしても、正常な腎臓に比べてみたら毒素の除去が不足しています。それが原因でリンもカリウムも上がり、透析と透析の間に体重が増えてしまいます。
一方、一回8時間・週7回の透析を行うと食事制限はありませんし、透析では毒素だけでは無く栄養素も抜けてしまいますから、たくさん食べなさいと指導されます。言い方を換えると、週3回の普通の透析を受けている以上、合併症を進行させないためには、食事療法のルールが必然的に生じてしまうということです。

「だったら食べなければいいや」と思う患者さんもいるかもしれません。しかしそれが一番いけません。元気で長生きするために一番大切なのは、筋肉量を落とさないことです。食べないで採血データを良くしても、エネルギー不足で痩せが進んでしまっては元も子もないのです。上手に食べて、痩せてこないしデータも良いというのが理想です。

よくあるリンの問題 〜それは本当に食事のせい?

「きちんとやっているつもりなのに、いつもリンが高いと言われる」と感じている人も多いのではないでしょうか。それは、あなたの食事が悪いからなのでしょうか?
もちろん、乳製品など、リンを多く含む蛋白質の過剰摂取でリンはあがります。しかし、リンは透析患者さんによく認められる副甲状腺機能亢進症という合併症と、その治療薬であるビタミンD製剤でも上昇するのです。
食事はしっかりやっているのに、副甲状腺のせいでリンが高いのに「食事、食事」と言われるのは“ぬれぎぬ”ですね。よく使われている高血圧の薬には高カリウム血症を来すものがあり、こころあたりのない高カリウム血症では、血圧の薬をチェックしてもらいましょう。

食事療法の前提条件 まとめ

これまで述べた食事療法の前提条件を、以下にまとめました。患者さんと医療者の相互不信を生まないためにも、こうした点に意識して食事療法に取り組むことが大切です。

図:食事療法の前提条件

体重増加の問題 〜水分制限のカラクリ

透析患者さんは、透析と透析の間に体に水分がたまって体重が増え、次回の透析の時にドライウェイトまで一気に水を引きます。一気に大量の水分を抜き取ると、体がついて行けなくなり、血圧低下(ひどいときはショック状態)や筋肉のけいれんが起きます。
そのため、「水分注意」、「体重増加は5%未満」などの指導を受けますが、これには実は知っておかなければいけないカラクリがあります。「水分!水分!」と水分ばかりが強調されますが、確かに体重増加の直接の理由は水分ですが、大事なのは水分ではなく塩分なのです。

私たちの細胞外液(血液など)は、塩分を含んだ水でできています。食事などで塩分を摂取したり、大量に汗をかいたりすると、この濃度が上昇してのどが乾いて(口渇といいます)、水を飲みたくなります。つまり、塩分摂取→塩分濃度上昇→水分摂取→体重増加というカラクリになります(図)。塩分8g(店屋物一食+味噌汁1杯ぐらい)摂取すると、1Lの水を飲み終えるまで口渇が続き、体重が1kg増えるのです。

図:塩分を摂取すると体重が増える

つらいのは塩分を制限することではなく、水分を制限することでもないのです。口渇を我慢する、我慢させられるのがつらいのです。大事なのは水分制限ではなく塩分制限で、塩分制限をすると口渇は気にならなくなります。

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