肥満と痩せの関係について
体重の変動は、食べ物から摂取するエネルギー量と、日常的な活動や運動などで消費するエネルギー量のバランスで規定されます(*1)。
つまり、食べ過ぎや運動不足では、体重は増加し肥満につながります。逆に、食欲の低下による食事量の不足や、発熱、感染症などでは体重は減少し、痩せにつながります(図)。透析患者さんにおいては、ドライウェイト(DW)の変化がこれにあたります。
透析患者さんは少し太っているほうがいい?
一般的に肥満は生活習慣病のリスクを上げることはよく知られていますが、透析患者さんにおいては、肥満や体重増加よりも、痩せや体重減少のある患者さんのほうが長生きできないと報告されています(*2)。また、日本透析医学会統計調査委員会においても、痩せている患者さんほど死亡リスクが高いことを報告しています(図)。
したがって、元気に長生きするためには、十分な栄養量を確保し、痩せや体重減少を回避することが重要になります。
透析患者さんはエネルギー不足に陥りがち
透析患者さんは、尿毒素の蓄積による食欲不振や透析による栄養素の除去、慢性炎症などの影響でエネルギー摂取不足から低栄養に陥りやすくなります。また、高齢患者さんでは先ほどの影響に加えて、味覚の変化や胃腸障害、摂食・嚥下機能の低下、その他の合併症なども加わり、いっそうエネルギー摂取不足の危険が増します。
*1 菱田 明ほか, 日本人の食事摂取基準 2015年版, 第一出版: 2014
*2 Pifer TB, et al., Kidney Int. 62(6): 2238, 2002