なぜリンが高いといけないのでしょうか?
週3回、4時間の標準的な透析ではリンの除去量には限界があるため、患者さんは高リン血症になります。高リン血症は自覚症状がなく、すぐに症状が出るわけでもありません。よほどの高値でない限り、皮膚の搔痒(かゆみ)などの軽度の症状があるか症状が全くないうちに動脈硬化や骨の病気が進行してしまうのです。
高リン血症の原因は食事だけとは限らない
高リン血症の原因は食事だけではありません(表)。患者さんそれぞれで高リン血症の原因を評価して、それに合わせた対応をすることが重要です。
食事が原因でリンが高いときの対応は?
ここからは、高リン血症の原因が食事に起因している場合に注意すべきポイントを述べます。
(1)まずは、2種類のリンを理解する
リンには、「有機リン」と「無機リン」の2種類があります。
「有機リン」は、肉や魚、卵、乳製品、豆類などのたんぱく質に多く含まれており、これらの食品を多くとるほど、リンの摂取量も増えます。焼肉を食べたり、宴会で刺身やえびの天ぷらをたくさん食べたりするとたんぱく質摂取量が増えて、血清リン値が上がります。この場合、血清リン値だけでなく血清尿素窒素も上昇し、塩分摂取も増えますから透析間の体重増加量も多くなります。
「無機リン」は食品添加物として使用されており、ウインナーやハムなどの食肉加工品、干物や練り物などの水産加工品、プロセスチーズ、インスタント麺、缶詰、ファストフードなど、ほとんどの加工食品に含まれています。有機リンは腸管から体内に吸収される割合(吸収率)が20~60%であるのに対して、無機リンは90%以上と高く(*)、血清リン値が上昇しやすくなります。(表)
* Kalantar‒Zadeh K. Patient Prefer Adherence 7: 379‒90, 2013