カリウムの働き
ミネラルの一種であるカリウムは、血圧の調整や筋肉の収縮の調整など、体にとって重要な働きをする栄養素です。
通常、体内の余分なカリウムは、腎臓の働きにより尿中へ排泄されます。しかし、透析患者さんは腎機能が低下しているため、尿から排泄される量が少なく、カリウムが体にたまり、高カリウム血症になりやすいのです。
高カリウム血症・低カリウム血症
透析患者さんの高カリウム血症は、食事による過剰摂取だけでなく、降圧薬や便秘によってもおこります。血液検査でカリウム値が6.0mEq/L以上になった場合は要注意です。
高カリウム血症になると、しびれや不整脈といった症状があらわれます。重症になると、心停止に至る恐れもあります。
一方、食事量が十分に取れていない方や、下痢、嘔吐などの症状がある方は、低カリウム血症となり、脱力感、不整脈などの症状があらわれることがあります。
透析患者さんのカリウム摂取量の基準は?
透析患者さんのカリウム摂取量の基準を表に示しました。
腹膜透析の場合は、カリウムが透析液へ持続的に除去されるため、通常は制限がありません。ただし、高カリウム血症を認める場合は、血液透析と同様にカリウムの摂取を制限する必要があります。
カリウムが多く含まれる食品とは
おもな食品のカリウム量を図に示しました。
カリウムの多い食品は、食べてはいけない物ではありませんが、量の調整が必要です。
また、カリウムの少ない食品であっても、たくさん食べると摂取量は増えてしまいます。特に旬の野菜や果物は、一度に食べる量や食べる頻度が増えてしまうため注意が必要です。
まずは、食品に含まれるカリウム量を知り、食べる量を調整したり、カリウムを減らす調理法を取り入れたりすると良いでしょう。
カリウムを減らす工夫
カリウムは水に溶けるため、食材を切ってから水にさらす、茹でる、といった方法で減らすことができます。こうした工夫で、カリウムが20%程度減少します。
一般的に、野菜や芋類はカリウムが多いといわれますが、上の図のように、食品によってその量は大きく異なります。したがって、調理の際に、カリウムの多い食品の一部を、カリウムの少ない食品に置き換えるのも有効です。例えば、ほうれん草だけ使うところを、ほうれん草に玉葱やもやしを組み合わせる、といった具合です。
最近は、低カリウム野菜を取り扱うお店も増えました。そうした食品を利用するのも一つの手です。
【参考文献】
・透析ケア 2013年 夏季増刊号, 食事療法がまるわかり!透析患者の栄養管理と食事指導
・透析ケア 2016 vol.22 No.9, キーワードでわかる水・電解質・酸塩基平衡
・慢性腎臓病に対する食事療法基準2014年版, 日本腎臓学会 編
・慢性腎臓病 生活・食事指導マニュアル, 日本腎臓学会
・臨床栄養 別冊 CKDの最新食事療法のなぜに答える 実践編
・Nutrition Care 2016 vol.9 No.4, イラストでわかるビタミンとミネラルのはたらき
・透析患者の検査値の読み方 改訂第2版, 黒川清 監修, 日本メディカルセンター