食事のポイント

高齢の透析患者さんの食事

矢吹病院 健康栄養科

2018.08.10

矢吹病院 健康栄養科

高齢者の現況と身体の変化

日本透析医学会によると、わが国の透析導入患者さんの平均年齢は69.4歳で、65歳以上の高齢者は69.8%を占めています*1
加齢が進むと身体機能は徐々に低下し、食事面でも様々な変化があらわれます。(図1)

図1:食事に関わる身体機能の変化

透析患者さんの栄養障害

透析患者さんは、透析に関連する栄養障害を引き起こしやすい状態にあります。(図2)
低栄養状態に陥ると、筋肉量が減少して筋力が低下するほか、認知機能や免疫力など様々な機能が低下して日常生活に支障をきたします。そうならないために、普段から栄養状態を意識しておくことが大切です。

図2:栄養障害を招く要因

低栄養に気づくポイント

低栄養の危険があるかどうかは、自分でチェックできます。(図3)

図3:低栄養のチェックポイント

あてはまる項目が多い場合は低栄養の可能性がありますので、主治医や栄養士、看護師に相談しましょう。

低栄養を予防する食事の工夫

基本的に透析患者さんは、塩分やリン、カリウムの摂取量に制限が設けられています。しかし、栄養状態が低下している人は、エネルギーや栄養素の確保を優先して、毎日しっかりと食べることが肝心です。
以下に、食が進みやすくなるポイントを示します。普段の食事の参考にしてください。

(1)好みや食習慣を優先する

好きなもの、口に合うものを積極的に食事に取り入れます。例えば、主食はいつも同じものにせず、おにぎりや炊き込みご飯、お寿司、サンドイッチ、麺類など、変化を持たせると食欲につながります。
また、ヨーグルトや牛乳、アイスクリーム、プリン、温泉卵、卵豆腐など、喉ごしのよい食品は食が進みます。

(2)味付けを工夫する

和食を好む高齢者は多いと思いますが、醤油や味噌に偏ると味付けが単調になります。
レモンや柚子、酢、梅で酸味を、唐辛子やわさび、からし、山椒、カレー粉で辛味を加え、味に変化を出すことで食が進むこともあります。また、これらは香りも良く食欲をそそります。

(3)食材選びや調理法を工夫する

歯に問題があると、家族と同じ食事では硬く食べにくいと感じるかもしれません。また、加齢で飲み込みにくいこともあります。そんな時は、食材選びや調理法などを少し工夫するだけで、ぐっと食べやすくなります。(図4)

図4:食べやすくするための工夫

(4)調理の負担を減らし、食べたい時にすぐ食べられるようにする

調理が面倒で食事そのものを避けたり、調理に時間がかかって食欲が減退したりすることがあります。できるだけ調理の手間を省き、食欲を感じた時にすぐに食べられるようにするのも一つの手です。例えば、缶詰や日持ちするレトルト食品、チルド惣菜、冷凍食品を常備しておくと便利です。
他にも、食材の宅配をお願いする、宅配弁当を利用する、ヘルパーさんに調理を依頼するといった方法があります。

(5)食環境を変える

外食や食事会などに参加すると、会話が生まれて気分転換にもなり、1人で食べるよりも楽しんで食事ができます。

(6)栄養補助食品を利用する

栄養補助食品は、少量で栄養量を補えるので便利です。いろいろな味があり、飲料、ゼリー状など種類も様々です。好みや飲み込む力に合わせてうまく取り入れましょう。
栄養補助食品は、ドラッグストアや薬局、一部のスーパーなどで購入できます。

*1 日本透析医学会統計調査委員会:図説わが国の慢性透析療法の現況(2016年12月31日現在)

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