ドクターインタビュー

水口 潤 先生

社会医療法人 川島会 川島病院 院長

目次

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川島ホスピタルグループが目指すもの、そして透析の将来

「老廃物を取り除く」という、透析の本分を尽くすために

現在、先生は川島病院 院長として日常臨床に携わっていますが、施設ではどのような治療方針をとっているのでしょうか。

水口 「限られた時間の中でいかに多くの尿毒素を取るか」。それが川島ホスピタルグループの方針です。具体的には、透析液清浄化、大面積ダイアライザの使用、タンパクリーク膜(タンパク質が漏れる膜)の使用、そして高血流量です。HDFも積極的に推進しています。

限られた時間、すなわち、基本は4時間でベストクオリティを目指すということですね。大面積、高血流量とはどのくらいですか。

水口ダイアライザの膜面積は2㎡以上、血流量は最低で250mL/分を基本としています。

タンパクリーク膜を使うのは、どういった理由からでしょうか。

水口大きな分子量の老廃物をできるだけ除去するためです。タンパクリーク膜を使うと、アルブミンという必須タンパクが抜けてしまうという考えもありますが、治療が難しい透析合併症を防ぐ点で非常に有用です。これについては、30年以上前から行っていますね。

HDFも積極的に推進されているとのことですが、現在、川島ホスピタルグループのHDF患者さんの割合はどのぐらいですか。

水口約40%です。

全国平均(14.5%(*))と比べると、割合が高いですね。どのような患者さんを対象としているのでしょうか。

水口比較的年齢の若い方をはじめ、骨関節症や貧血が治らない方、かゆみが強い方に施行しています。実際、HDからHDFに変えた患者さんの約4割で、臨床症状が改善したとの結果も出ています。

日本の透析医療を率いる立場と、臨床として患者さんと関わる立場。その両方から幅広い見解をお聞かせいただきました。最後に、先生がこれから目指す、透析医療の方向性をお聞かせください。

水口日本の透析医療にとって、今後、患者さんの高齢化は大きなテーマです。高齢になれば通院が困難となり、治療の継続を阻みます。その時、介護施設と隣接した透析施設の設置や、腹膜透析の普及といった手立ても必要になってくると思います。
あとは、長期透析による合併症を防ぐために、いかに良い透析治療、血液浄化を提供できるかです。現在のところ、その一つの手段がHDFかもしれません。
そして最後に一つ加えたいのが、腎移植の普及・啓発です。日本の透析技術は世界一を誇り、今後もさらなる進化を遂げると思いますが、腎代替療法という広い視点に立つと、腎移植は非常に有用な選択肢です。腎不全患者さん一人ひとりに相応しい治療法が適切に提供できる環境づくりを目指したいですね。

*:日本透析医学会, 図説 わが国の慢性透析療法の現況 2014年12月31日現在: 36

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