キーワード透析事典

ボタンホール(穿刺)

ぼたんほーる(せんし)

Buttonhole

鋭利な針を用いた通常の穿刺方法は異なり、ボタンホールは皮膚表面とシャント血管壁との間に固定された穿刺ルート(=ボタンホールトンネル)(図1)を作り、そこへ先端が鈍い針(=ダルニードル)(図2)を通してシャント血管を穿刺する方法です。

図1:ボタンホールの穿刺部とボタンホールトンネル

図2:通常針とダルニードルの比較

ボタンホールトンネルは、同じ箇所を複数回通常穿刺したり、バイオホールキットを使ったりすることで作成します。ボタンホールトンネルを通ったダルニードルはシャント血管に達した後、血管壁上の穿刺孔を通ってシャント血管内に入ります。

ボタンホールは、毎回同じトンネル、穿刺孔を使っているため穿刺が容易で、穿刺の際の痛みが少なく、シャント血管へのダメージも少ないので、シャントが長持ちし、止血時間も短くなるというメリットがあります。
一方、ボタンホールトンネルを通って血管上の穿刺孔を探り当てられずに血管壁に跳ね返されて(=トランポリン現象)、穿刺作業時間が長くなる、穿刺時の痛みが変わらない、止血時間が延びるなど全く反対の報告もあります。

ボタンホールの最も大きなデメリットは、通常穿刺に比べてシャント関連感染症が多いとされることです。このシャント感染はダルニードル穿刺前の痂皮(=かさぶた)の除去が不十分であることや穿刺部の消毒の不徹底が原因と考えられます。かさぶたの除去を十分に行い、穿刺部の消毒を徹底することによりシャント感染を避けることができます。

確実に穿刺できる箇所が少ないなどのシャント血管の保護が必要な患者さんや、穿刺時痛を訴える患者さんにボタンホールはよい適応となります。富田クリニック(本院)では自己穿刺が必要な在宅血液透析患者さんに最も適した穿刺方法と考え、HHD患者全員にボタンホールを訓練していただいてます。

ボタンホールの普及には、施設間で差のあるボタンホールトンネルの作成や穿刺手順・管理における手技を統一することと、通常穿刺より多いとされるシャント感染症の発症を抑えるために、消毒の徹底や清潔に手順を進めるための訓練が大切です。

一色 啓二 先生

2018.11.30

一色 啓二 先生(富田クリニック(本院) 院長)

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