MediPressリポート

腎移植の現状 〜2021年のデータから

MediPress透析 編集部

2023.09.15

MediPress透析 編集部

ご存じのように、腎代替療法には血液透析や腹膜透析、腎移植の3つがあります。

このうち腎移植は、人から提供していただいた腎臓を移植することで腎不全になる前と同じような機能を取り戻す方法です。透析に比べて生活の自由度が高く、良好な生命予後が期待できる一方で、腎臓の提供者が必要なため、普及がなかなか進まないという現状があるようです。

皆さんの中にも、腎移植に関心を持つ方や、腎移植を検討している方がいらっしゃると思います。そこで今回のMediPressレポートでは、日本臨床腎移植学会・日本移植学会の2021年の報告(*1)をもとに、腎移植の現状をお知らせしたいと思います。

◆2021年の腎移植実施数は1,773例 生体腎移植が圧倒的

わが国の2021年の腎移植実施数は1,773例で、それまで増加傾向にあった2019年までに比べて新型コロナウイルスの影響はまだみられるものの、多少の改善傾向がありました。

参考:日本移植学会HP

腎移植には、健康な人から片側の腎臓を提供してもらう「生体腎移植」と、亡くなった人から腎臓を提供してもらう「献腎移植」の2つの方法がありますが、総数1,773例の内訳を見ると、生体腎移植1,648例、献腎移植125例と、圧倒的に生体腎移植の割合が多いことが分かります。

腎移植を受けた人(レシピエント)の平均年齢については、生体腎移植で49.2±14.8歳で、50〜59歳の割合が最も多く、次いで40〜49歳、60〜69歳の順でした。一方、献腎移植は平均年齢51.0±15.6歳で、50〜59歳、60〜69歳、40〜49歳の順に多いという結果でした。

性別をみると、生体腎移植で男性64.1%・女性35.9%、献腎移植で男性65.6%・女性34.4%と、男性が多いことが分かりました。

◆献腎移植は待機期間が長い

報告には、レシピエントが透析療法を行っていたかどうかについても記されています。それによると、透析を行っていた人は生体腎移植で57.8%、献腎移植で85.8%でした。逆に、透析を全く行わずに腎移植を行った人は生体腎移植で23.8%おり、腎不全から透析へ移行する前に腎移植を行う人(先行的腎移植)も一定数、存在することが分かります。

さらに、腎移植を実施するまでの透析期間に関しては、生体腎移植で平均2.3±3.8年、献腎移植で平均16.1±9.1年と大きな開きがあり、献腎移植では移植までの待機期間が長いことが分かります。生体腎移植では、87.5%が透析期間5年未満であったのに対し、献腎移植では透析歴10年以上の人が70.9%、さらに20年以上の人が34.0%を占めていました。献腎移植ではドナー不足により、透析を受けながら長い期間、移植を待っている状況であるといえます。

◆約43%が配偶者間による実施

さらに報告には、ドナー(腎臓の提供者)に関する情報も報告されています。

それによると、ドナーの平均年齢は生体腎移植58.8歳、献腎移植48.1歳で、生体腎移植ではレシピエントの高齢化とともにドナーの平均年齢も上がっているようです。性別に関しては、レシピエントの男女比とは逆で、女性が半数以上を占めていました(男性:女性=34.8:65.2。生体腎移植の場合)。

また、生体腎移植におけるレシピエントとドナーの関係は、配偶者42.8%、親30.2%、兄弟姉妹7.2%、実子1.7%の順で、配偶者から腎臓を提供してもらうケースが多いことが分かります。

腎移植後の経過に関しては、2010〜2020年のレシピエントの生存率は、5年で96.7%、10年で90.7%でした。また、生着率(移植した腎臓が機能している人の割合)は、5年で93.1%、10年で81.1%と、良好であることが分かります(いずれも生体腎移植でのデータ)。

生体腎移植、献腎移植のいずれにおいても、生存率・生着率は年代とともに改善しており、特に2001年以降は良好な成績となっています。生着率については、生体腎では1983~2000年で1年生着率93.0%、5年生着率が81.9%でしたが、2010~2020年では98.7%、93.1%に上昇しており、献腎では1983~2000年の81.6%、64.8%から2010~2020年では95.9%、87.9%へと著明に上昇しています。(*2)

参考:日本移植学会HP

わが国は世界と比較しても、とりわけ献腎移植の提供数が圧倒的に少ないといわれています。ただ、新型コロナウイルスの影響はありながらも、2023年になり臓器提供数増加の兆しも見えており、今後の動向が注目されます。

(*1)日本臨床腎移植学会・日本移植学会 腎移植臨床登録集計報告(2022)2021年実施症例の集計報告と追跡調査結果 移植 57(3): 199, 2022
(*2)日本移植学会 2022臓器移植ファクトブック

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