入浴で一般的に注意しておきたいこと
入浴(風呂にはいる)は日本人の日課です。体の汚れを落とすだけでなく、一日の疲れを癒すためにも欠かせないという方も多いと思います。
一方、入浴による急激な温度変化とそれに伴う血圧変化は、一過性の脳虚血、脳出血、脳梗塞、心筋梗塞といった重篤な疾患を引き起こし、不慮の事故にもつながる大問題です。
血圧、体液状態が不安定な透析患者さんでは、入浴による血圧変動が更に大きくなるので、特に注意が必要です。体調のすぐれない時には入浴を控える、長湯を避けて38〜41度までのぬるめの湯温に入る、脱衣場を暖める、入浴する事を家人に伝えるなどの対策をしましょう。
血液透析患者さんの入浴
血液透析後の入浴は、原則として禁止しています。それは、透析後は血圧が低い傾向にあり、入浴によって更に血圧が低下する可能性があること、入浴によってシャント穿刺部の出血と感染の危険性があるからです。
それでも入浴したい場合には、血圧が安定しているか、シャント穿刺部は十分止血できているか、発赤や痛みなどの感染の兆候がないかを確かめてください。問題がなければ穿刺孔に保護テープを貼り、38〜41度までの湯温に10分以内の入浴か、シャワー浴をおすすめします。
腹膜透析患者さんの入浴
腹膜透析では、PDカテーテル出口部を清潔に保ちながら入浴しましょう。
シリコン製のPDカテーテルは生体組織と接着しないため、皮膚の上皮がカテーテルに沿って内側に落ち込む「ダウングロース」を形成します。このダウングロースは、深くなると出口部ケアが難しくなり、さらにダウングロースの先端では上皮のない組織とPDカテーテルが接触しているために、感染が起こりやすい状態になっています。以下に、腹膜透析治療中の入浴方法について説明します。
■入浴方法の種類
入浴の方法には、出口部を保護しない「オープン法(オープン入浴とオープンシャワー浴)」、出口部を保護する「クローズド法(クローズド入浴とクローズドシャワー浴)」があります(表)。
最近では、出口部を洗浄して清潔に保つことで出口部の皮膚本来の防御機能を引き出すという考えから、オープン法を勧める施設がふえてきました。PDカテーテルを留置して3〜4カ月以降の出口部が固定した時期から、オープン法が可能となります。
オープン法ではどうしても感染が心配という方や、出口部に感染兆候がある場合は、クローズド法で入浴します。
クローズド法で使用する保護用具には、ストマ用のパウチを代用したミニクローズ®、バイオクローズA®、バリケアナチュラ®とPD専用のCAPD入浴パック普及型®があります。いずれも、袋状のパックの中に腹膜カテーテルを入れ、出口部にパックを接着させて使用するものです。
また、ドレッシングフィルム剤のIV 3000 ドレッシング®でカテーテル全てを被う方法もあります。
■浴湯洗浄剤の使用
オープン入浴では感染予防のために一番湯をすすめています。殺菌効果のある洗浄剤(スパクリーンPD®、ミルトンタブレット®:両者の成分は同じ)を使うと、出口部の感染予防に更に効果的です。
■温泉、公衆浴場、サウナでの注意
温泉、公衆浴場の浴湯は自宅の浴湯に比べて細菌が多く、オープン入浴はすすめられません。クローズド入浴をすすめます。また、サウナでは発汗によって保護用具が剥がれることに注意してください。
■入浴時の出口部ケア
オープン法で出口部を石鹸洗浄(弱酸性の液体石鹸をすすめます)する場合は、体・頭を洗った後に出口部を洗浄します。石鹸を手で泡立て、指の腹で出口部周囲を洗い、シャワーで石鹸成分や汚れを十分洗い流し、清潔なタオルで出口部の水分を拭き取ります。その後浴槽に入り、最後にもう一度出口部をシャワーでしっかり洗い流してから水を拭き取ります。
クローズド法では、体・頭を洗い浴槽に入ります。体を拭いた後に保護用具を外します。出口部周囲は固く絞ったガーゼで拭き、その後に出口部の消毒を行います。出口部の消毒は各自の方法にそって行います。