体調管理の基礎知識

家庭での血圧管理

吉川 和寛 先生

2017.12.28

吉川 和寛 先生(岩手医科大学 講師)

家庭血圧測定がなぜ大切か

みなさんの中には、「家ではよい血圧なのに、病院で測ると緊張して血圧が上がってしまう」という方がいるかもしれません。

実は血圧は、1日の中でも、季節によっても、あるいは様々なきっかけによっても変動します。また、医療機関と家庭で血圧値が違う場合もあります。先に示したような、医療者の白衣を見ることで血圧が上がる「白衣現象(白衣高血圧)」や、診察室では正常値でも家庭血圧は高い「仮面高血圧」などがその例です。

そうした血圧値の違いや変動パターンを把握するには、病院での測定だけでは不十分で、家庭での血圧値も含めた評価が重要です。また、家庭血圧値は、服用している降圧薬の効果や持続時間の把握、透析患者さんの透析間の体重(体液)管理の重要な判断材料にもなります。

過去の研究でも、家庭血圧値は診察室血圧値よりも生命予後の優れた予知因子であるとされ、家庭血圧値と心血管病の発症および生命予後に関する臨床データも数多く報告されています。
つまり、家庭血圧値は「健康状態を知る重要なバロメータ」なのです。

なお、高血圧の基準値は診察室血圧と家庭血圧で異なります。日本高血圧学会は、「診察室血圧は140/90mmHg以上、家庭血圧は135/85mmHg以上の場合に高血圧とみなす」としています。

家庭血圧測定の方法

それでは具体的に、家庭血圧を測定する際のポイントを紹介しましょう。

図:透析患者さんの家庭血圧測定方法

【血圧計】

血圧計は、上腕で測定するタイプ(上腕カフ・オシロメトリック法に基づく装置)をおすすめします。国内メーカー製の血圧計であれば、概ね正確な測定ができると考えて差し支えありません。(家庭血圧計の精度検定の成績は、http://www.dableducational.org/あるいはhttp://www.bhsoc.org/に掲載されています)
指用の血圧計は不正確とされています。手首の血圧計も動脈の圧迫が困難である場合があり、不正確になることが多いため、医学的にはお薦めできません。

【測定時のポイント】

静かで適温に保たれた環境で、背もたれ付きの椅子に足を組まずに1~2分間安静にして座り、カフの位置を心臓の高さにして測定するのが理想とされています。測定中は会話を交わさないようにします。測定前の喫煙、飲酒、カフェインの摂取は控えましょう。

【測定のタイミングと回数】

測定のタイミングは、早朝起床時および晩の就床前の測定が推奨されています。朝は起床後1時間以内で、自尿の出る方は排尿後、朝の服薬前、朝食前です。
原則、1機会に2回測定し、2回の平均をその時の家庭血圧とします。1機会に1回のみ測定した場合は、その血圧値を記録します。

血液透析患者さんでは、血圧測定は透析中と同じようにシャント肢ではない腕で測定します。上肢での測定が困難な方は下肢で測定しますが、上下肢の血圧にはそもそも差があるため、注意しなければいけません。

血液透析患者さんの家庭血圧測定時の注意点

血液透析患者さんの血圧は、透析が中2日空いた週初めが一番高く、週末にかけて次第に低下します。また、透析日と非透析日では血圧の調子が変わることが多いです。ドライウエイトが変わると体調に変化が出ることがあるため、いつも以上に家庭血圧に注目しましょう。

図:血液透析患者さんの血圧の特徴とポイント

透析患者さんの血圧は、日内変動や季節変動に加え、透析での除水による体液量の減少や、透析間の体重増加の影響を強く受けます。さらに、透析患者さんによく見られる動脈硬化・血管石灰化や心血管疾患なども、血圧に強く影響を与えます。適切な健康管理のためにも、日ごろから正しく家庭血圧を測定する習慣を身につけましょう。

<参考>日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2014」, ライフサイエンス出版: 2014

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