体調管理の基礎知識

シャント音の確認(2)異常音

深澤 瑞也 先生

2016.09.16

深澤 瑞也 先生(山梨大学大学院 病院准教授)

シャント音とは何か?

「シャント音の確認(1)正常音」で述べたように、シャント系のアクセス(AVF、AVG)には、シャント音と呼ばれる、通常の血管では聞こえない音が聞かれるようになります。高い圧の動脈(血圧計で測定される圧です)から、圧の低い静脈(通常測定はできませんが、ほぼ0に近い圧です)へと血流が流れ込む際に生じる雑音です。
川も通常流れる音はしません。しかし川幅が変わったり、石などで細くなったりせき止められていたり、落差があったりすると音が生じます。つまりシャント音とは、何らかの流速が変化したり圧較差が生じた場合には発生するのです。

異常なシャント音

これも正常音のところで書きましたが、そもそも動脈と静脈を吻合するといった、生まれ持っている正常な血管系ではありませんので、“正常”なシャント音と呼んでよいのかは少々疑問なところがありますが、“正常に透析医療が安定して行えている状態”のシャントとご理解ください。
連続した低い音がいわゆる正常音ですから、これから外れた音は何らかの異常音となります。断続音、ピーピーといった高い音、シャーシャーという無理やり通過するようなこすれた音、最後に巻き舌のような巻き戻るような音は、何らかの異常音と考えられます(表)。

表:正常なシャント音、異常なシャント音

シャント音の実際

では、実際に異常音を確認してみましょう。
下の動画は、シャントの血管造影のビデオ画像(1/2倍速)です。血管が狭窄しているため、血流のスピードが遅く、ゆっくりと流れていることがわかります。このシャントの①吻合部近くと②シャント血管の音を聞いてみてください。
「①吻合部近くの異常音」は、小さく、そしてザッザッという断続音が聞き取れるかと思います。
さらに、狭窄から正常な径に移行する部位の音が「②シャント血管の異常音」です。特徴は、小さいが比較的連続性の音、ただし最後にピーという高い音が聞こえます。①と②では、同じ患者さんの同じシャントであるにもかかわらず、音の性状が異なっています。

【例1】狭窄したシャントと、①吻合部近く、②シャント血管の音

この狭窄した血管を治療し、広げた後の状態が次の動画(1/2倍速)です。血流の速さが圧倒的に早くなっていることがわかるかと思います。これは、より多くの血流が流れていることを意味します。音も聞き比べてみてください。

【例1】血管内治療後のシャントと、①吻合部近く、②シャント血管の音

血管内治療に関しては、また他の項目で詳しくご説明させていただきますが、現在、日本では血管狭窄の第一選択の治療法です。

もう1つ、異常な状態のシャントとシャント音を紹介します。下の動画では、血管が数珠状になっていて数カ所の狭窄が確認できます。「③吻合部近くの異常音」は小さく断続的で、無理やり狭いところを通り受けるような、こすれた音といってよいでしょう。「④シャント血管の異常音」は連続的ではありますが、各々の拍動の最初の音と最後のほうの音が明らかに異なり、巻き込んだようなヒューヒュー音が聞こえます。

【例2】狭窄したシャントと、③吻合部近く、④シャント血管の音

こちらも、治療後の音は明らかに異なっています。

【例2】血管内治療後のシャントと、③吻合部近く、④シャント血管の音

日々の聴診

このように、シャントの音は聞く場所によって異なります。しかし、正常な音はどこで聞いても、音の大小はあれ連続的な低い音です。狭窄などの異常なシャントでは、聞く場所によってあたかも正常な音と遜色ない音が聞き取れることがあります。ですから、シャントの音はシャント全長にわたり聞くことが重要なのです。決して1カ所を聞いて問題ないと思わないようにしましょう。
シャントは透析を行うための大事な"門”です。自分の透析医療の質を担保するためにも、スタッフに任せっきりではなく、必ず自分で毎日数カ所聞きましょう。

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