「腎不全における再生医療の最前線」第61回日本透析医学会学術集会・総会レポート

MediPressリポート

「腎不全における再生医療の最前線」第61回日本透析医学会学術集会・総会レポート

北村 悠樹 先生

2016.08.05

北村 悠樹 先生(桃仁会病院 腎不全科 医長)

◆「ヒトiPS細胞由来器官原基移植療法の開発」
横浜市立大学 臓器再生医学 武部 貴則 先生

移植医療の現状として、アメリカでも待機患者が増加しています。その一番の原因が臓器不足です。
しかし、iPS細胞であれば、血液1滴から臓器再生できる可能性があると考えられています。
講演では、「iPS細胞から臓器の4次元での再生(立体的および機能の再生)が可能なのか」をテーマに話が進められました。

発表では、iPS細胞による臓器再生の研究状況が報告されました。

<iPS細胞の臓器再生の研究状況>

母親の胎内で臓器の原型が作られるときの過程に似た、細胞培養技術(器官原基法)を開発。試験管内で、ヒトiPS細胞から立体的な肝臓の原型を創ることに成功した。
①で創られた肝臓の原型(ヒトiPS細胞由来肝臓原基)を免疫不全マウスに移植したところ、ヒト血管網を持つ機能的なヒト肝臓が作られた。
この細胞培養技術(器官原基法)をほかの器官に応用したところ、肝臓だけでなく、腎臓、軟骨、膵臓、腸、肺、心臓、脳、がん細胞などを含むさまざまな細胞種から、立体的な複合組織を創ることに成功した。
試験管内で誘導したマウス腎臓原基の異所性移植(別の場所に移植すること)では、最終的に尿を産生する腎組織が生みだされた。

最後に、「腎臓も再生できつつあるが、まだ尿路系(おしっこの通り道)は再生できていない現状がある。organ bud(移植の種)で再生できるよう、さらに再生医療・創薬応用に向けて開発する」との言葉がありました。

以下は発表者の主な論文です。
・Takebe T. et al., Vascularized and functional human liver from an iPSC-derived organ bud transplant., Nature 499(7459): 481-4, 2013
・Takebe T. et al., Vascularized and Complex Organ Buds from Diverse Tissues via Mesenchymal Cell-Driven Condensation., Cell Stem Cell 16(5): 556-65, 2015
・Takebe T. et al., Transient vascularization of transplanted human adult-derived progenitors promotes self-organizing cartilage., J Clin Invest 124(10): 4325-34, 2014

◆「腎臓の起源の理解と三次元再生への応用」
熊本大学発生医学研究所 腎臓発生分野 太口 敦博 先生

ヒトiPS細胞技術による再生医療への期待が高まる中、発表者らは、ヒトiPS細胞から腎臓再生を目指していくとのことでした。
生体内で腎臓が生成される過程では、「尿管芽」と呼ばれる尿管・集合管の元になる組織(おしっこの通り道)と、ネフロンや間質の元になる「後腎間葉」(おしっこを作る所)が相互作用しています。発表者らはその点に注目し、以下の2点を解明したそうです。

「尿管芽」の元になる細胞は、体幹の頭側に発生して尾側へと移動・伸長するのに対し、「後腎間葉」は体幹の尾側から発生。のちに両者が出会って腎臓を形成することが明らかとなった。
ネフロンの元になる「後腎間葉」が作られるしくみを明らかにし、世界に先駆けてマウスのES細胞と、ヒトのiPS細胞から、糸球体と尿細管の立体構造を持つ腎臓組織の作製に成功した。

現時点ではまだ、集合管と尿管は再生できていないとのことです。今後は、発生が別々である「尿管芽」と「後腎間葉」を合わせて分化させることを目指していきたいとの話でした。

◆「再生腎臓における尿排泄路機構の構築」
東京慈恵会医科大学 腎臓・高血圧内科 横手 伸也 先生

これまでの研究で、ヒト幹細胞をラットの腎原器に注入して発育させ、尿産生能をもつヒト幹細胞由来の腎組織の再生に成功していますが、その組織には尿排泄路がないため、臨床的には応用できないものでした。
そこで発表者は、臨床応用を目指して、再生腎臓での尿排泄路の構築をテーマに、クローンブタを用いて研究を重ねてきました。

腎臓の再生には、次の3つのポイントがあるとのことでした。

3次元構造を構築すること
血管系の結合
尿管系の結合

特に③については、「Step-wise peristaltic ureter system(膀胱付き腎臓から自己尿管につなげる方法)」が、腎臓再生医療に不可避な「尿排泄路の確保」というステップをクリアすることがわかり、臨床応用に繫がる可能性が示唆されました。

 

最後に、司会の友先生から「再生医療の可能性については期待されるものがあり、今後の研究に大いに期待したい」との締めの言葉があり、ワークショップが終了しました。

一連の講演を聴講し、腎臓の再生医療の難しさを感じる一方で、その進歩には凄まじいものがあり、今後の治療が劇的に変わる要素があると感じました。
近い将来の腎不全領域の治療変化を、楽しみながら待ちたいと思います。

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