体調管理の基礎知識

糖尿病患者さんの体調管理 〜血糖値の管理

一色 啓二 先生

2016.06.17

一色 啓二 先生(富田クリニック(本院) 院長)

血液透析の血糖管理:透析日と非透析日の血糖変動を把握しましょう

血液透析をしている糖尿病患者さんでは、透析をする日としない日で血糖の動きが異なるという特徴があります。
一般的な透析液にはブドウ糖が含まれているため(100mg/dLあるいは150mg/dL)、透析中は血糖値がその値に近づきますが、同時にインスリンが透析膜によって除去されたり吸着されたりすることがあります。そのため、透析中や透析後の血糖値が、透析をしない日の同じ時間帯の血糖の動きと異なるケースもよくみられます。また、透析スケジュールが食事時間を不規則にすることもあります。
したがって、血糖管理の際は、自己血糖測定でそれぞれの日の血糖の動き(血糖日内変動)を確認することが大切です。検査できる施設は限られますが、より詳細な血糖変動を把握するのに、血糖(厳密には組織の糖)を連続的に自動測定する機器、皮下連続式グルコース測定システム(Continuous Glucose Monitoring system;CGMS)も役に立ちます(図)。

図:皮下連続式グルコース測定システム(CGMS)

腹膜透析の血糖管理:腹膜透析液のブドウ糖の吸収も考慮しましょう

腹膜透析をしている糖尿病患者さんは、腹膜透析液中のブドウ糖の吸収も考慮して血糖管理をしなければなりません。イコデキストリンを含んだ腹膜透析液を使っているときは、実際の血糖値より高い値を示す方法で血糖測定をする機種があること、腹膜透析液にアルブミンが漏出し低アルブミン血症を呈している場合にはGA値が指標にならないことなどに、注意が必要です。

透析患者さんの血糖管理はインスリン注射が基本

糖尿病以外の原因で透析をしている人にも、年1回の透析前血糖値とGA値の測定が勧められています(*3)。透析をはじめた後に糖尿病を発症したものの、気づいていない『かくれ糖尿病』の人がいます。
血糖を管理するために、食事・運動とあわせて薬を用いますが、透析をしている糖尿病患者さんにはインスリン注射が基本です。内服薬である経口血糖降下薬を用いる場合には、その薬の種類、量といったことに注意して使わねばなりません。詳しくは別の機会に説明させていただきます。

*3 日本透析医学会, 血液透析患者の糖尿病治療ガイド2012. 透析会誌 46(3): 319, 2013

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