腎性貧血の診断に必要な検査
貧血の有無は、血液中のヘモグロビンの量をもとに診断されます。医療機関でよく使われるWHOの定義では、男性でヘモグロビン(Hb)が13g/dL未満、女性では12g/dL未満を貧血としています。
一方、Hbの正常値は人種差、性別、年齢等によって異なります。このため、透析医学会のガイドラインでは、表に示した基準としています。
鉄欠乏の有無についても、検査が行われます。血清鉄(Fe)(μg/mL)、不飽和鉄結合能(UIBC)あるいは総鉄結合能(TIBC)(μg/mL)と、フェリチン(ng/mL)が測定されます。
鉄は、血液の中では、トランスフェリンというたんぱく質に結合し、運ばれています。このトランスフェリンの量が総鉄結合能(TIBC)、そのうち、鉄が結合していないトランスフェリンの量が不飽和鉄結合能(UIBC)です。したがって、TIBC = UIBC + Feの関係があります。
総鉄結合能のうちで、鉄が結合している割合を、トランスフェリン飽和度(TSAT)と呼び、Fe÷TIBC×100(%)で計算されますが、TSATとフェリチンから鉄が足りているか、欠乏しているかが判断されます(図)。
さらに、血液検査では、赤血球の一個の大きさ(平均赤血球容積:MCV)や網赤血球という検査も行われます。MCVは、その名の通り、赤血球の大きさの平均値です。このMCVの大きさによって、小球性貧血(MCVが小さい)、正球性貧血(MCVが正常)、大球性貧血(MCVが大きい)に分けられます。腎性貧血は正球性貧血ですが、小球性貧血で最も重要なのは鉄欠乏性貧血、大球性貧血で重要なのは、ビタミンB12、葉酸の欠乏です。
このように、MCVによって、おおよその貧血の原因が明らかになり、次の検査・治療の糸口となるのです。作られたばかりの赤血球は、染色(メイギムザ染色)して顕微鏡で観察すると、紫色の網目模様が見られます。これを網赤血球と呼ぶのですが、網赤血球の数、あるいは赤血球に占める割合から、骨髄でどの程度赤血球が作られているかが判断できます。赤血球が作られる量が増えた場合に、ヘモグロビンが増加するのに先んじて、網赤血球が増加するので、治療の効果が早期に分かるだけではなく、網赤血球が増加しているのにヘモグロビンが改善しない場合には、出血、溶血(赤血球が壊されること)など、赤血球が失われるような原因がないかの検索が必要となります。