血管痛とは
血液透析患者さんの血管痛とは、おもにシャント血管(人工血管を含む)およびその周囲に生じる痛みのことをいいます。原因がはっきりしないこともたびたびあり、激しい痛みのために対応に困ることも少なくありません。
考えられる原因
血管痛ではさまざまな原因が考えられます。穿刺そのものによる痛みのほか、血管壁や血管内の逆流防止弁が血液と一緒に針から吸われるために起こる疼痛もあります。
透析中に痛む患者さんでは、シャントから血液を抜いたことで周囲の血液のめぐりが悪くなったために生じる場合もありますし、血液を血管に戻す際に血管内の圧力が上昇して起こる場合もあります。こうした痛みは、シャント血管が細くなったことが原因です。これらの血管痛は、おもに透析中に症状が悪化します。
また、透析時以外にも血管痛が起こることがあります。例えばシャントが閉塞すると、詰まった血の塊によって炎症が起こり痛みが発生します。シャント血管が感染すると、熱、血管の腫れ、皮膚の赤みなどとともに痛みが出現します。シャント血管にたんこぶ状に膨れた瘤ができて、そこが痛み出した場合は、瘤が破裂する前兆である可能性もあり注意が必要です。
また、手根管症候群や頚椎症、肩関節症のほか、感覚神経や交感神経の一部が過敏になっていることなどが原因で血管痛に似た痛みが生じる場合もあります。血管痛を訴える患者さんに対して、こうした病気がないかを確認することもあります。
血管痛の解消策、血管痛を緩和するための方法
診察により痛みの原因が明らかになれば、その原因を取り除くことで血管痛も改善される可能性があります。
血管が細い、閉塞している、瘤があるなど、シャント血管が原因であれば、細くなった部分をPTAで拡げたりシャントを作製しなおします。感染が原因であれば、抗菌薬を投与して炎症を抑えます。穿刺そのものの痛みに対しては、透析の前にテープタイプやクリームタイプの麻酔薬を使ったり、保冷剤で冷却したりすると痛みが和らぎます。(関連ページ:穿刺の痛みをなんとかしたいのですが、方法はありませんか?)
一方、原因がはっきりしない場合は、痛み止めを使う、針を刺す場所をかえる、血液の流れを改善する薬剤を使う、痛む部分を温めるなどの対処により、痛みが軽くなったり改善したりすることもあります。
血管痛の原因は多岐にわたりますので、痛みを一人で抱え込まずに、医師を含めた透析室のスタッフに、いつ、どこが、どのように痛むのかを詳しく伝えていただければと思います。