腎性貧血(1)原因と検査

透析の合併症

腎性貧血(1)原因と検査

花房 規男 先生

2017.02.10

花房 規男 先生(東京女子医科大学 准教授)

貧血と聞いてどのような症状を想像するでしょうか?立ちくらみやふらつきでしょうか。確かに、こうした「脳貧血」症状も貧血と呼ばれますが、ここでは、血液が薄くなってしまう貧血についてお話ししたいと思います。
腎不全では、しばしば貧血が認められます。こうした腎不全に伴う貧血を、腎性貧血と呼びますが、その原因には、様々なものがあることが知られています。

腎性貧血の原因は?

(1)エリスロポエチンの不足

腎臓では、エリスロポエチンというホルモンが作られています。しかし、腎不全になると、このホルモンがあまり作られなくなってきます。
エリスロポエチンは、骨髄で赤血球を作るという作用を持っていますので、不足すると、骨髄で赤血球が作られなくなり、貧血になります。このため、治療ではエリスロポエチンの作用を補う薬を使う必要があるのです。

(2)鉄欠乏

特に血液透析を行っている場合には、鉄が失われやすい環境にあります。年間の鉄の喪失量は約2gとされています。また、透析を受けている患者さんでは、様々な原因から、胃・腸など消化管からの、急性・慢性の出血を認めることもあります。このような場合には、出血自体が貧血を起こすだけではなく、鉄も欠乏してしまいます。
さらに、腎不全では、炎症などによって、ヘプシジンというたんぱく質が血液の中で増加しています。このヘプシジンは腸からの鉄の吸収を抑えてしまいますので、食事からの鉄が吸収されにくいという背景も存在します。

(3)その他の原因

赤血球の寿命は通常120日とされていますが、腎不全・透析を行っている場合には、赤血球の寿命が短くなっています。このため、貧血が見られやすいのです。
さらに、腎性貧血の原因としては、赤血球が作られにくくなるほかにも、さまざまな原因があります。したがって、エリスロポエチンを補っても改善しない場合(ESA低反応性の場合)には、その原因を検索する必要があります(表)。

表:ESA低反応性の原因

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