透析の合併症

筋けいれん・こむらがえり

長沼 俊秀 先生

2017.07.07

長沼 俊秀 先生(大阪公立大学大学院 講師)

透析中の筋けいれん・こむらがえりの原因

「筋けいれん(有痛性筋けいれん)」とは、医学的には筋肉が発作的に反復して収縮している状態で、いわゆる「足がつった」状態のことをいいます。
健常者でも運動中の筋肉疲労時に経験することがありますが、血液透析患者さんの場合は、透析後半に、おもに下肢に多く起こります。また、上肢、腹部、胸部などに起こる場合もあります。

筋けいれんが起こる詳しいメカニズムは分かっていませんが、おもに次の三つの原因があると考えられています(図)。

図:筋けいれん・こむらがえりの原因

これらのことが引き金で血管が収縮し、局所の血液循環が悪くなり、筋肉に流れる血液の量が減り、けいれんが誘発されると考えられています。

また、そのほかの原因としては、低ナトリウム血症・低カルシウム血症・低マグネシウム血症・L-カルニチンの低下などが考えられています。

筋けいれん・こむらがえりの予防策

筋けいれん・こむらがえりを防ぐには、先ほど述べた原因を取り除くことが基本です。

血液透析中の筋けいれんは、除水量が多く血圧が低下しやすい方に多く見られます。したがって、発症を防ぐには除水し過ぎないことが重要で、そのためにも、患者さんは透析間の体重を増やしすぎないことが大切です。体重増加は塩分や水分の摂取を反映します。体重増加量の多い方は減塩を心がけましょう。

除水量が少ないのに筋けいれん・こむらがえりを繰り返す方は、ドライウエイトの設定がきつすぎるケースがあります。その場合は、ドライウエイトの再設定が必要です。

ほかにも、ナトリウムやカルシウム、マグネシウムの低値、あるいはL-カルニチンの低下などが原因の場合は、これを補充します。
また、透析前の「芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)」の内服が予防に有効な場合があります。(図)

図:筋けいれん・こむらがえりの予防策

筋けいれん・こむらがえりへの対処

筋けいれん・こむらがえりが起こった場合は、まず除水を止め、血圧が低下していないかを確認します。血圧が低下していれば、下肢の拳上や生理食塩水の急速静注などの処置を行い、循環動態を安定させてから、筋けいれんに対する処置を行います。

一般的には、つっている筋肉を伸ばしてもらったり、ホットパックで温めたりします。筋けいれんが起こった時の薬物療法としては、血圧低下に対する薬剤のほかに、「芍薬甘草湯」の内服(これは症状が現れた後の内服でも有効です)や、カルシウム製剤の静注が行われることがあります。

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