その他、貧血治療で考慮すべき点
ESA低反応性
先述のとおり、腎性貧血にはESAが使用されますが、十分なESAを使用しても、貧血が改善しない場合があります。こうした状況をESA低反応性と呼びますが、多くの場合には、何らかの合併症が存在することが知られています(表)。
このため、これらの原因に対する検査と対策が、ESA低反応性の治療では必要とされています。
ESA療法の副作用
ESAの副作用として、血圧上昇、血栓症の増加、赤芽球癆(せきがきゅうろう)、癌患者さんでの癌の進行などが懸念されています。
ESA使用による血圧上昇は、エリスロポエチンが使用されはじめた1990年代には問題視されていましたが、ESAが適正に使用されるようになった現在は、あまり問題とはなっていません。しかし、Hb値の急激な上昇は避けるべきとされています。
赤芽球癆(せきがきゅうろう)は、エリスロポエチンに対して、体が免疫反応を起こし(抗体を産生することで)、ESAが効かなくなる病態です。頻度は非常にまれ(100万人あたり数人)ですが、重度のESA低反応性が見られる場合には、考慮しなければならない病態です。
一方、血栓症の増加、癌の進行についても、懸念される点ではありますが、現時点では、いずれもESA使用との関連を明確に示す知見は得られていません。ただし、癌を合併している場合のESAについては、過度な使用は避けることが望ましく、貧血の改善とのバランスで使用量を調整する必要があります。
将来の展望 〜新しい薬剤への期待
体内で産生されるエリスロポエチンの調節には、HIF(低酸素誘導因子)と呼ばれるものが関わっています。この働きを利用してエリスロポエチンの産生量を増やし、貧血を改善するという薬剤が開発され、注目を集めています。実際に治療で用いられるまでにいくつか解決すべき問題はありますが、今後の動向が期待されます。