PADの治療
PADの治療の目的は、動脈硬化の進展抑制と血流の改善です。薬物治療や血管内治療のほか、運動療法、血管内皮機能障害改善作用のLDL吸着治療、血管再生治療(末梢血幹細胞移植、自己骨髄幹細胞移植など)、医療用無菌マゴット(ハエの幼虫)を使用したマゴットセラピー、高気圧酸素治療なども、新たな治療法として注目されています。
PADが重症化している場合は、足の動脈の手術や下肢切断を行うこともあります(表)。
PADの予防
PADの発症を防ぐには、禁煙や肥満の改善のほか、日常から足部を清潔な状態に維持すること(フットケア)が重要です。また、薬物治療によって、血圧や血糖、脂質、カルシウム、リン、副甲状腺ホルモン、尿酸などを適切にコントロールすることも大切です。さらに、栄養管理を適切に行い、十分な透析量を維持します。
早期発見・早期治療で重症化を防ぐ
PADの重症化を防ぐには、何といっても早期発見が肝心です。毎日、異常がないか、目で見て、触ってみることが大切です。
最近は、フットチェックやフットケアを実施する医療機関も増えています。異常を認めない患者さんでは月1回、異常のある患者さんでは1〜2週間に1回を目安に、フットケアチェックシートを用いて実施します。スキンケア(皮膚管理)とネイルケア(爪管理)の処置や、セルフケア(自己管理)に繋げる指導も行います。
フットチェックで皮膚に異常を認めた場合、基本的には、自分でできることは自分でやってもらうセルフケアを指導します(図)。視力障害や身体が硬くなって安全に爪切りなどができない患者さんには、家族にも指導を行います。
透析室では、ささいな傷でも放置せずきちんと治療します。末梢循環改善のマッサージとともに、足浴による感染症予防、角質除去、爪病変の観察治療などを行います。
透析室でのフットケアで改善されない場合は、皮膚・排泄ケア認定看護師(Wound Ostomy and Continence Nursing:WOC)や複数の診療科の専門医と迅速に連携する、チーム医療が重要となります。