透析療法の基礎知識

血液濾過透析(HDF)のしくみ

土田 健司 先生

2016.07.01

土田 健司 先生(土田透析アクセスクリニック 院長)

「拡散」と「濾過」では、除去しやすい分子量の大きさが異なる

血液透析(hemodialysis:HD)は、半透膜を介して血液と透析液を接触させ、主に拡散の原理によって血液中の対象物質を除去する血液浄化法です。HDは、小分子量の物質の除去に優れていますが、中分子量以上の物質では、膜面近くの拡散能力が下がるため、除去効率が低下してしまいます。
一方、血液濾過(hemofiltration:HF)は、透析液を使わずに圧力をかけて血液を濾過(限外濾過)し、不要な水分や対象物質を除去する血液浄化法です。除去した体液(濾液)に見合った分の電解質液を体内に補充します。膜孔を通過できる物質であれば、分子量に関係なくほぼ一定の濃度で除去できます。
HFは、HDと比べて中分子量物質や低分子量蛋白の除去に優れ、小分子量物質の除去効率が低いという特徴があります(図)。

図:腎臓や各透析療法の物質除去能力の違い

血液濾過透析は「拡散」と「濾過」の両方のしくみが生かされている

血液濾過透析(hemodiafiltration: HDF)は、HDとHFの長所を生かし、短所を補った血液浄化法です。小分子量物質から低分子量蛋白領域の物質まで、幅広い溶質の除去が可能です。
HDF療法は、拡散現象を原理とするHDと、濾過を原理とするHFの両者を併せ持った物質除去方法ですが、そのメカニズムはあくまで拡散ではなく濾過が中心であることを、ここでは強調しておきます。

「置換液」を入れる場所・種類・置換方法の違い

HDFでは、「置換液」を血液中に注入して希釈します。置換液を入れる場所(希釈部位)の違いから、
・前希釈法(pre-dilution:Pre)
・後希釈法(post dilution:Post)
・前後同時希釈法(pre&post dilution)
の3つに分類されます(図)。

図:血液透析濾過(HDF) 前希釈と後希釈

前希釈法(Pre)

血液浄化器(ヘモダイアフィルタ)の流入側から置換液を注入して透析濾過を行う方法です。ヘモダイアフィルタを通る前に血液が希釈される(薄まる)ので、除去したい物質の血中濃度も低くなり、拡散による除去効率は低くなります。反面、フィルタの蛋白の目詰まり(ファウリング)が起こりにくく、経時的な性能低下を招きにくいという利点があります。

後希釈法(Post)

濾過した後に血液浄化器の流出側から置換液を注入する方法です。除去した体液(濾液)は血漿由来のものなので、同じ置換液量を使うのであれば、前希釈法よりも効率よく除去できます。しかし一方で、前希釈法に比べて一般的にアルブミンの漏出量が多いため、置換液量と使用するフィルタの組み合わせに注意する必要があります。

一般に、前希釈法で後希釈法と同等の効果を得るには、約3倍程度の置換液が必要であると考えられています。

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