透析療法の基礎知識

オーバーナイト透析

一色 啓二 先生

2017.11.10

一色 啓二 先生(富田クリニック(本院) 院長)

オーバーナイト透析のメリット

オーバーナイト透析の最大のメリットは、夜間に長時間透析をすることで、高いQOL(Quality of Life=生活の質)とHDP(Hemodialysis Product=透析量)の両方が得られる点です。
仕事や学業・家事への時間的な制約が解消されるだけでなく、医療面では合併症が改善し、薬剤の使用を減らせることがわかっています(図)。その理由としては、透析時間を長くすることで時間あたりの除水量を減らせるようになり、それによって透析中の血圧低下を防ぎ、心臓や体への負担を軽減できるためといわれています。また、一般的な透析では除去しにくい物質の除去率が上がることも理由とされています。

図:オーバーナイト透析のメリット

オーバーナイト透析のデメリット 〜リスクを避けるために

しかしながら、すべての方がすぐにオーバーナイト透析を始められるわけではありません。
オーバーナイト透析はまさしく夜間に実施されるため、日中に比べると緊急時の対応がどうしても遅れ、希薄になります。
そのため、実施にあたっては、絶対にリスクを避けなくてはなりません。

リスクを避けるための条件(1)合併症のコントロール状況が良好である

オーバーナイト透析に移行する前には、心血管系疾患などの合併症が十分にコントロールされていることを確認します。

リスクを避けるための条件(2)体重管理や食事管理ができる

移行前も移行後も、体重管理や、水分・リン・カリウムなどの食事管理ができることが重要です。長時間透析で総除水量は増やせますが、透析間の体重増加が多いと、結局、時間あたりの除水量が増え、血圧も低下しやすくなります。これでは、夜間の睡眠中に安全な透析を行うことはできません。
当院では、時間あたりの除水量は最大0.6Lを上限とし、8時間透析では最大除水量を4.8L(=最大体重増加量4.8kg)としています。この約束を守れない場合は、日中の透析クールに戻っていただいています。

また、眠っている間に針が抜ければ大事故になります。当院では、針が抜けないように、透析回路は十分に固定し、漏血センサーを装着した上に伸縮ネット包帯で覆うなど、いろいろな工夫をしています(図)。

図:オーバーナイト透析の安全対策の例

在宅にしても施設にしても、十分な安心・安全のもとにオーバーナイト透析が行える体制であることが必須です。いずれにせよ、夜間におこなうメリットがデメリットになってはいけません。

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