透析療法の基礎知識

腹膜透析のしくみ

友 雅司 先生

2016.09.23

友 雅司 先生(大分大学医学部附属 臨床医工学センター 診療教授)

腹膜透析を検討するにあたって

腹膜透析を検討する際は、血液透析(hemodialysis:HD)も含めたそれぞれの透析療法の特性を把握し、総合的に検討することが大切です。腹膜透析と血液透析、あるいはその両方を併用した場合では、治療内容や日常の制限事項など、さまざまな面で違いがあります(表)。

表:腹膜透析、血液透析、ハイブリッド透析の違い

特に腹膜透析の場合は、適応(相応しい人)と禁忌(実施できない人)があります(表)。また、実施にあたっては、家庭や職場環境、介助者としての家族の協力が不可欠です。

表:腹膜透析の適応と禁忌

心配な場合は、実際に腹膜透析を行っている患者さんから、治療や日常生活の様子を教えてもらうと、不安が和らぐかもしれません。自分が腹膜透析を実施できるかどうか、医師と一緒に確認しましょう。

加えて、知っておいていただきたいのは、腹膜透析治療は「時限的である」ということです。
腹膜透析では、残腎機能の低下(尿量減少)とともに、溶質除去能が低下し、除水量も減少します。その場合、透析液の種類やスケジュール(貯留時間、バッグ交換回数)の変更、サイクラーの使用、血液透析の併用などが必要になることがあります。
また、腹膜透析の実施期間が長くなるほど、透析膜としての腹膜機能も劣化します。腹膜透析を8年以上継続していると、腹膜機能が低下し、限外濾過減少、溶質除去の低下、さらに腸管と腹膜の癒着する被嚢性腹膜硬化症(Encapulated peritoneal sclerosis:EPS)という合併症が起こりやすくなるといわれています。

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