透析療法の種類

透析療法の基礎知識

透析療法の種類

北村 悠樹 先生

2016.04.15

北村 悠樹 先生(かつら透析クリニック 院長)

腹膜透析療法について

腹膜透析療法の特徴

腹膜透析(PD)とは、腹膜を介して体内に貯まった余分な水分や老廃物(尿毒素、クレアチニンなど)を取り除く治療です。現在、日本では透析患者さんの約3%、約1万人弱の方が腹膜透析を選択しています。
日本では少数派の治療法ですが、世界的には約10万人以上の方が受けています。メキシコや香港では、透析治療の半数以上の方が受けており、地域によっては血液透析より腹膜透析の方がスタンダードです。
腹膜透析は残腎機能を保持しやすいとの利点があり、PDファーストで透析を始めた方が良いとの考え方もあります。また、長期血液透析中の方や高齢者などでは、血液透析よりも循環動態の安定した腹膜透析が適しているため、腹膜透析を最後まで継続するというPDラストという考え方もあります。
腹膜透析の内容については、連続携行式腹膜透析(CAPD)、自動腹膜透析(APD)、ハイブリッド透析(血液透析と腹膜透析の併用療法)など(表)、様々な方法で行っている病院があります。これらの治療に関しては、主治医や透析施設によって方針が異なることがありますので、よくご相談の上、方法を選択してください。

表:腹膜透析の種類

腹膜透析のしくみ

腹膜透析とは、腹膜を介して透析療法を行うやり方です。「腹膜」とは、腹腔内の胃、腸、肝臓などの内臓表面と腹壁の内面を覆っている膜です。
おなかの中に透析液を入れておくと、体内に貯まった余分な水分や老廃物(尿毒素、クレアチニンなど)が透析液に吸い込まれていきます。吸い込まれた透析液を取り除いて、新しい透析液を入れる作業を繰り返すことで、血液が浄化されていきます。
透析液を交換するためには、おなかと外をつなぐ細い管(透析カテーテル)を留置する必要があります。透析カテーテルを留置する手術は、麻酔を含めて1~2時間程度で終了します。病院によっては、留置日から腹膜透析を開始することがあります。また、管をおなかに埋めておき、必要な時期が来れば外に出す方法(SMAP法)もあります。
透析液は、CAPDの場合、1日3~4回交換します。交換には細い管(透析カテーテル)を使い、1回30分前後で透析液の出し入れをします。
交換は、基本的にはご本人またはご家族(介護者)が行います。場所や時間帯は生活のリズムに合わせて決めることができます。

腹膜透析の長所

第一のメリットは、時間をかけて透析を行うので体への負担が少ない点です。また、血液透析のように透析ごとに針を刺す必要もなく、留置された細い管(透析カテーテル)より毎回透析液を交換するだけで終了します。
血液透析は、基本的には病院に週3回通院する必要がありますが、腹膜透析は月1~2回程度の通院で済みます。また、自宅または職場など様々な場所で透析が行え、時間帯もある程度、生活リズムに合わせて選ぶことができます。
残腎機能を保持しやすいため、食事においては、血液透析に比べて、水分やカリウムなどの制限がゆるやかです。また、尿が出る期間も血液透析に比べて長期になる傾向があります。

腹膜透析の短所

腹膜透析は、ご本人またはご家族(介護者)の自己管理が求められます。中でも出口部の管理が重要で、出口部から感染症を起こしやすいため出来るだけ清潔に保つ必要があります。また、常におなかに透析液を入れているため、腹膜炎になる可能性があります。何度も腹膜炎を繰り返すと、腹膜透析が出来なくなり、細い管(透析カテーテル)を抜くことになります。
また、長期間腹膜透析をしていると、被嚢性腹膜硬化症を引き起こすことがあります。基本的には、腹膜透析は5~8年ぐらいまでにしておく方が良いとされています。
食事制限に関しては、血液透析に比べて水分やカリウムなどの制限は緩やかですが、あくまでも残腎機能が保たれている期間のみになります。尿量が低下してくると、血液透析と同様な食事制限が必要となってきます。
また、腹膜透析ができる病院が少なく、地域によっては腹膜透析を選択できないケースも想定されます。

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