最近、虚弱を意味する「フレイル」という言葉が聞かれるようになりました。
フレイルとは、加齢で心身の機能が低下した状態のことで、「健康と要介護状態の中間」にあたります(図1)。
意図しない衰弱、筋力の低下、活動性の低下、認知機能の低下、精神活動の低下など健康障害を起こしやすい脆弱な状態です。
特に高齢者の場合、筋力低下による転倒で骨折し、いきなり要介護状態となる危険性も高まります。
これまでの研究では、慢性腎臓病の早い段階から次第に身体機能が低下しはじめ*1、透析導入後の高齢者では著しく日常生活の活動度(ADL)が低下する*2患者さんがいることがわかってきました。
しかし、たとえフレイルになっても、早期に適切な対応をとれば、要介護状態になるのを防ぎ、健康な状態に戻すことも可能です。
フレイル対策には、運動、食事、合併症の治療、十分な透析など、多面的な管理が求められます(図2)。
この中で運動については、筋力や運動能力を上げることが大切です。一般的には、有酸素運動(ウォーキングや水泳など)と筋力トレーニング(筋肉に負荷をかけるトレーニング)の組み合わせがよいといわれています。
ただ、最初から無理な運動をしてしまうと体に負担をかけますし、続けるのもおっくうになります。歩くのが困難でなければ、手始めとしてウォーキングがおすすめです。
運動は安全に継続することが大切です。適切な運動内容や強度は、一人ひとりの体調や状況によっても異なります。運動を始める前に、必ず主治医に相談してください。
*1 Hiraki K, et al. Clin Exp Nephrol 17(2): 225, 2013
*2 Kurella TM, et al. N Engl J Med 361: 1539, 2009