現在、日本の血液透析患者さんの89.7%は、自己血管内シャントで透析を行っています*。シャントは透析を行うための大事な「門」です。シャントに閉塞や感染が起こると、透析が続けられなくなり、再手術が必要となることもあります。そのため、普段からシャントを保護し、長持ちさせるように心がけたいものです。
シャントの保護の基本は、血管を圧迫しないことです。まずは、シャント肢を下にして腕枕をしない、シャント肢で重いものを持たない、シャント肢をぶつけない、シャント肢で血圧測定をしない、といった予防策をとります。また、シャントの吻合部が手首の近くにある場合は、腕時計やブレスレットをはめないようにしたほうがいいかもしれません(吻合部が肘に近い場所にあり、シャント血管を圧迫しなければ差し支えありません)。
そうした基本的な対策に加え、こまめにシャントの状態をチェックすることも重要です。シャント部分を触って拍動を確認するほか、血管や吻合部を耳に近づけて、音が聞こえるかどうかを確かめます。拍動音が正常に感じられない、シャント音が聞こえない、いつもと違う音がする、音が途切れている、シャント肢が痛むなどの異常があれば、速やかに通っている透析施設に連絡してください。また、感染を防ぐため、シャント肢は常に清潔にしておくことも大切です(図)。
日ごろから「シャントを守る」という意識を持つことで、ちょっとした異変にも気付くようになり、早期の対応も可能となります。できるだけトラブルを避け、順調に血液透析を続けたいものですね。
* 日本透析医学会「図説 わが国の慢性透析療法の現況 2008年12月31日現在」: 50, 2009