通常、リンは食事を通して体に取り込まれ、余分になったものは尿や便となって排泄されます。しかし、腎機能が低下すると、体の中のリンが十分に排泄されずに血液中に溜まり、「高リン血症」となります。
高リン血症は血管石灰化を進め、やがては心不全や足の壊死などを招く恐れがあるため、血清リン濃度を適正(3.5〜6.0mg/dL*1)にコントロールする必要があります。
リンの管理では、体に入るリンと体から出るリンのバランスをとることが重要です(図1)。透析患者さんの場合、摂取したリンは尿から排泄されないため、透析療法や体に吸収されるリンを減らす「リン吸着薬」の服用と併せてバランスをとります。
では、食事からのリン摂取量はどのぐらいが望ましいでしょうか。
日本透析医学会では、透析患者さんのリン摂取量の基準値を、1日あたり(0.9〜1.2)×15×標準体重※(kg)mg以下としています*2。
例えば、身長165cm、標準体重60kgの人の1日のリン摂取量はおよそ810〜1,080mg以下となります(図2)。 一般的な食事には1日およそ1,200mgのリンが含まれるので、この場合、健康な人と同じ食事ではリンの摂りすぎとなります。
ただ、摂取可能なリンの量は、患者さん一人ひとりの状況(栄養状態など)や透析条件、リン吸着薬の服用などによって異なりますので、数値はあくまで目安と考えていただくのがよいでしょう。
リンの管理は透析療法、食事療法、リン吸着薬の服用を組み合わせて総合的に行われます。医師や管理栄養士の指導に従い、まずはリンが多く含まれる食品を知ることから始めましょう。
※ 標準体重=身長(m)×身長(m)×22
*1 日本透析医学会「慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常の診療ガイドライン」, 透析会誌 45(4): 301, 2012
*2 中尾 俊之ほか,「慢性透析患者の食事療法基準」, 透析会誌 47(5): 287, 2014